作り笑いでも寿命は2年延びる。
運動不足や喫煙といった危険因子だけでは「何をすれば病気にならないのか」が十分説明できないとしたら、一体どこに目を向ければいいのか。ひょっとしたら生活習慣以外の要因も関わっているのではないだろうか。そうした仮説に基づき、アメリカでは1980年代あたりから、心理学のように医学とは畑違いの研究分野からも健康問題に関して新たな発見が相次ぎました。
そうした研究の一つに笑顔研究があります。つまり「笑顔であること」と健康にどんな関わりがあるのかを探る研究です。
本心から笑っている人は目の横にカラスの足跡のようなシワが寄ります。これを、この笑顔に初めて注目した19世紀のフランス人神経学者の名前から「デュシェンヌ・スマイル」といいます。
デュシェンヌ・スマイルのようには目元が笑っておらず、口だけで笑っているのが、いわゆる作り笑いですが、作り笑いでも健康に良いという事実が発見されたのです。
作り笑いと健康に関する有名な研究は、シカゴの臨床医カーマイン博士によってアメリカの野球のメジャーリーグを対象として行われました。
メジャーリーグに入団する選手たちは全員、オフィシャルな目的で使用するために顔写真を撮っています。その顔写真を手がかりに、カーマイン博士は過去50年間にメジャーリーグに入団した選手230人の寿命と笑顔の関係を調べました。
そして年収や現役で活躍できた年数といった他の要因を勘案して統計的に調整をかけた結果、デュシェンヌ・スマイルで目元まで本当に笑っている選手の寿命は平均79・9歳、笑顔なしの選手の寿命は平均72・9歳でした。つまり笑顔がある選手の方が7歳も長生きだったのです。さらに作り笑いの選手の寿命は平均74・9歳であり、作り笑いでも2歳寿命が延びていたのです。
さきほどタバコを吸わないと寿命が4年から5年延びるという話をしましたが、笑顔はタバコよりも寿命への効果が高い可能性があるのです。この研究結果を踏まえると口元だけの作り笑いでもいいから、無理に笑うことにも意味があると言えます。
アカデミー賞を獲ると寿命が4年延びる。
次はカナダのトロント大学のドナルド・リーデルメイヤーというお医者さんの研究です。彼はアカデミー賞の授賞式をテレビで観ていて、参加者がみんな羨ましいほど輝いた笑顔をしていることに改めて気がつきました。
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