私は予防医学の研究者です。予防医学とは病気を治すのではなく、病気にならないようにするにはどうしたらいいかを研究する学問です。
これから健康のために大切なことを語りたいと思いますが、そこには食生活、ウォーキングなどの運動、健康食品などは一切登場しません。健康になるために、もっとも大切なのは「つながり」なのです。
「つながり」とは平たく言うと人間関係のことです。
いつもあなたの前に座っている職場の同僚、しばらく連絡を取っていない中学校時代の同級生、犬の散歩をしているときによく出会って挨拶を交わす近所のおばあさん、故郷の両親、そしてあなたの配偶者……。みんなあなたの「つながり」であり、あなたを健康にしてくれる大切な存在なのです。
運動よりも同僚との関係が健康に効くと聞いても、ピンと来ないかもしれません。でも、これは絆を深めて助け合えば、どんな病気にも打ち勝てるといった根拠の薄い精神論ではなく、最新の予防医学が実証している事実です。「つながり」の“健康力”に関しては次のような発見があります。
・「つながり」が少ない人は死亡率が2倍になる。
・同僚があなたの寿命を決めている。
・「つながり」が単調な男子校出身者は早死にする。
・お見舞いに来てくれる人の数で余命が変わる。
・女性が長生きなのは「つながり」を作るのが上手なことも関係する。
・たくさんの「つながり」を持つほど長命である。
・「つながり」が幸せ感を高めてくれる。
その反面、日本人は「つながり」を作るのが不得意であり、それは日本人の健康力に悪い影響を与えている可能性があります。
・日本人は「つながり」が少ない。
・普段一人でいるか、家族以外と「つながり」がない無職の独り身が増えている。
・孤独死が多い。
・日本人の高齢者の満足度の低さは「つながり」の希薄さにある。
・日本人男性は悪い「つながり」でメタボになりやすい。
本書では「つながり」に注目しながら、こうした日本人に特徴的な悪い「つながり」の側面を解消していく提案をしていきたいと思います。
ダイエットや運動にはそれなりの準備とコストが要りますが、「つながり」作りはその気になれば今日から始められてほとんどコストがかかりません。
さらに「つながり」には「3次の隔たり」、つまり友達の友達の友達、同僚の配偶者のママ友、両親の知人の配偶者にまで波及するという特性があります。
つまりあなたが始めた「つながり」による健康作りは、周囲の人にも広がっていく可能性があるのです。
ダイエットや運動をした経験はあっても、「つながり」を意識的に作った経験はおそらくない人が大半でしょう。そこで本書では、誰でも手軽に始められる「つながり」の作り方を解説しています。
といっても特別なことではありません。同僚と雑談をする機会を増やす、同窓会に出てみる、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)で交流する、配偶者に笑顔で「ありがとう」を言う、両親に感謝の手紙を書いてみる……。そんな工夫で自分が健康になり、寿命が延びるのです。無理をしないで、できそうなことから少しずつ始めてみてください。
それではもっとも新しい健康作りのメソッド、「つながり」による健康力の高め方について詳しく紹介しましょう。
「つながり」の世界へようこそ!
次回、12/10更新予定
予防医学研究者の石川善樹さんが明かす、最高の健康法。気になった方は、ぜひお手にとってご覧ください。