服用前の注意「ヒトは呪術の魅力にハマる生き物である」
地球上のありとあらゆるところに宗教があります。
ヒトは神秘的なちから、超越的な意思、目に見えない何かを信じたい生き物なのでしょう。
ですから心霊現象、超能力、怪奇現象というキーワードは、科学の発達した現在でも非常にキャッチーなキーワードなのです。
未知の領域が現代よりもずっと広かった時代には、今よりももっとたくさんの不思議がありました。
例えば動物のもつ呪術的なちからは、昔の中国ではかなり本気で信じられていました。
今でもネコには霊的なちからがあると考えているひとは多いと思いますが、もっと小さな生き物にも不思議な能力があると信じられていたのです。
今回はそんなお話です。
『虫譜図説 12巻』飯室庄左衛門(国立国会図書館デジタルコレクションより)
造るだけ罪を問われる蠱毒とは
昔の中国の刑法にあたる「律」の中には、
清の時代でさえ、蠱毒を造るだけでも罪になると規定されています。
『清律彙纂』沈書城 編(国立国会図書館デジタルコレクションより)
※清律彙纂:天保年間に熊本藩が 「大清律例彙纂」 を律条・条例ばかりでなく、 註などすべてに返り点送り仮名を施し訓訳したもの。 明治政府初期法制の規範にもなった。
造るだけで罪になる蠱毒とはいったい何でしょうか?
造り方を紹介しましょう。
先ず、様々な虫を100匹用意します。ムカデ、サソリのような毒虫のほうが気分が出ます。
またこの場合の「虫」には、カエルやトカゲなども含みますので、そういうものを使ってもOKです。
100匹の虫を全て同じカメに放り込んで蓋をします。そうしますとカメの中で弱肉強食の戦いが勃発します。強い虫が弱い虫を喰うのです。
しばらくすると自分以外を喰い尽した最後の一匹が残ります。
それが「蠱」なのです。
ヘビが残れば蛇蠱、トカゲが残れば蜥蜴蠱など、最後に生き残る「虫」はその都度違うようです。
蟲毒の不思議なちから
では蠱はどのようにして使うのでしょうか?
まず毒として使う用途があります。それが蠱毒です。
結果的に「金蚕蠱」ができた場合の使い方をご紹介しましょう。
ちなみに金蚕蠱は最後の一匹が金色のカイコのような虫であった場合の蠱の名前です。
「蚕」という字を使いますが、カイコが生き残るのではなく、生き残った虫が金蚕蠱に変態すると考えられているようです。
金蚕蠱の糞便を毒として用いると、毒を盛られたヒトは、体じゅうの穴という穴から血を出して死亡します。これがホントウなら、エボラよりも怖いですね。
しかし殺すのだけが目的なら、こんなメンドウな毒を造りません。医学書にはもっと簡単に手に入る猛毒がゴマンと載っていますから、それを使えばよいのです。
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