銀座で食べる香り高き豚のかつサンド
11月の歌舞伎座公演、市川染五郎が勧進帳で弁慶を初めて演じるというので先週末に観に行ってきた。染五郎の曽祖父にあたる七代目の松本幸四郎、祖父の初世白鸚、そして今の松本幸四郎で3000回以上演じてきたという高麗屋代々の当たり役に、染五郎の数十年に渡る念願通じて、という演目であった。父幸四郎が富樫、息子の金太郎が刀持、叔父の中村吉右衛門が義経を演じるという豪華な配役で、最後の六法まで見応えがあった。
さて、演目は午後の分だったので、上演前に歌舞伎座近辺でランチをということで今回選んだのは、すぐ向かいにある「鮨 おのでら」。以前、この連載でも夜に行った時の話を書いたあのお店。夜はそこそこお値段は張るが、昼は3000円からにぎりが食べられる。僕も軽く飲んでいたのだが、気分よく酔っ払っていたおとなりのご夫婦が、さらにビールを一杯ごちそうしてくださるというご機嫌な休日の午後のはじまりである。
酔い覚ましに開演まではコーヒーでも飲みながらゆったりと過ごしつつ、休憩中につまむお弁当の手配を考える。この日に選んだのは、歌舞伎座のすぐ裏にある「銀座イマカツ」のかつサンド。これがかなり旨い。オムライスが有名な名物喫茶店「YOU」の並びである。揚げてはさむのに30分弱かかるということで、早めに電話で注文しておくのが吉。僕とこのイマカツという店との縁はけっこう長くて、もう7~8年前になるだろうか。外苑西通り、広尾駅から少し天現寺交差点の方に歩いた左手に「貴香村」という名前のとんかつ屋があって、うちからもそう遠くないのでけっこうな頻度で通っていた。香り高き豚を作る村の肉を使っているという由来でこういう店名だったそうだ。
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