朝倉祐介 Vol 1. 『ハゲタカ』で知った企業再生の道に、図らずも進むことに

さまざまなプロフェッショナルの生き方を、その人の読書遍歴、本に対する考え方などからひもといていくインタビュー。今回のゲストは、騎手見習い、東大法学部、マッキンゼー、ベンチャー企業、ミクシィ社長という異色の経歴を持つ朝倉祐介さん。子どもの頃から本好きで、ストレス解消の方法はアマゾンで本を「ポチる」ことだという朝倉さんは、これまでどんな本を読んできたのでしょうか。

筒井康隆でルサンチマンの洗礼を受ける

— 朝倉さんは、子どもの頃から本を読む方でしたか?

朝倉祐介(以下、朝倉) そうですね、小学校、中学校の頃からたくさん本を読んでいました。そのくらいで、本が好きな子ってけっこう星新一にいくじゃないですか。僕はなぜか、筒井康隆の方が好きだったんですよね。ほぼ全巻読んでいると思います。ものすごく天才的な作家さんだなあと。『残像に口紅を』っていう、各項ごとに一文字ずつ使えなくなっていく小説なんて、あの人にしか書けないですよね。

— 設定やストーリー、技巧的な面でも稀有な才能を持った作家ですよね。

朝倉 一方でルサンチマンの塊みたいな部分もあって、それに影響された面もあるかもしれません。

— 思春期に読んだことで、多少ひねくれてしまったところも……?(笑)

朝倉 確実にありますね(笑)。あとは、芥川龍之介や坂口安吾なんかも読んでいました。ああそうだ、先日軽井沢に行って、中学生のときに宮本輝の『避暑地の猫』という小説を読んだことを思い出しました。軽井沢が舞台の、愛憎入り混じった、男の妄想が炸裂してるような作品なんですよ(笑)。懐かしくなって、Kindleで買って16年ぶりくらいに読み返しました。

— なんかこう、小中学生の頃から明るい未来に向けたものというより、ニヒリズムというか、退廃的な作品を読まれていたんですね(笑)。では、仕事を決めるときに影響を受けた本などはありますか?

朝倉 社会人になる直前に『ハゲタカ』を読んで、初めてプライベート・エクイティ・ファンド(※)というものの存在を知りました。大学に入ってからずっと経営者になりたいと思っていたんです。仲間と会社をつくったりもしましたしね。それまで経営者というと、大企業の社長やスタートアップを始める起業家のどちらかというイメージしかありませんでした。でも『ハゲタカ』を読んで、落下傘的に経営不振の企業に入って、立て直しを図る経営のスタイルもあるということを知ったんです。
※ MBOファンド、企業再生ファンドとも呼ばれる。中長期での投資を主体とし、成長資金を供給する。もしくは、取締役を派遣し、大規模な経営再建を実施する

— 当時は予想もしてなかったかもしれませんが、後にミクシィで自ら企業再生を請け負う経営者となるわけですね。おもしろいめぐり合わせです。

朝倉 その後、著者の真山仁さんとお知り合いになる機会があって、いろいろお話をうかがったんです。真山さんは、「ひとつのテーマを小説という姿を通して描き切るのは、究極のジャーナリズムみたいなところがある」とおっしゃっていました。彼は作品のために徹底的に取材をするのですが、最後の最後までは聞かないんだそうです。一連の事実関係を確認してリアリティを突き詰めた上で、ラストは想像力でジャンプする。だから、小説としてエンターテインメント性のある作品に仕上がる。真山さんの作品のおもしろさは、そこから生まれているんでしょうね。

— 真山さんはもともと新聞記者をされていた方ですからね。

朝倉 やっぱりストーリーがあるほうが、内容が頭に入ってきやすいですよね。三枝匡さんの『V字回復の経営』もそうですけど。

— ああ、そうですね。リアリティとストーリーを兼ね備えたビジネス書です。

リアルな決断の話が一番参考になる

朝倉 あと、社会人になったら、小説よりもルポタージュ、ノンフィクションがおもしろいと思うようになりました。特に戦後の日本にスポットライトをあてた本ですね。学生の時は、あまりおもしろいと思えなかったんですよ。近代って戦国時代みたいに合戦があるわけでもないし、地味じゃないですか。司馬遼太郎の歴史小説などのほうが、おもしろく感じていました。

— はい。

朝倉 でも自分が社会に出てみたら、元地検特捜部の田中森一さんが書いた『反転―闇社会の守護神と呼ばれて』や、『同和と銀行―三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録』、などの、戦後の日本が抱えてきた暗部を暴くようなノンフィクションに夢中になりました。あとは、元三井住友銀行頭取の西川善文さんが書かれた『ザ・ラストバンカー』。これはめちゃくちゃおもしろかったです。

— ある種の告白本のようなジャンルですね。

朝倉 客観的に理論が書かれた経営書ってあまりおもしろく思えなくて。ジャック・ウェルチの『ウィニング 勝利の経営』は、僕にとってすばらしい教科書みたいな本ですが、そういう学びがある本は少ない。だったら、その人がビジネスパーソンとしてどういう人生をたどってきたのかを、赤裸々に書いた本のほうがリアリティを持って読めます。

— 日経新聞の「私の履歴書」のような。

朝倉 そうそう。あと『エメラルド・カウボーイ』という映画にもなった、早田英志さんの『エメラルド王』っていう本も、クレイジーでたまらないですね。コロンビアで、エメラルド原石業を始めて、そのあと輸出業で事業を拡大して、コロンビア最大のエメラルド輸出商になった人の一代記です。いやあ、これはぶっとんでますよ。

— そういう本を読んで、経営の参考にしたりしたのでしょうか。

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プロフェッショナルの本棚

ホンシェルジュ

本棚は人を表す、といいます。本連載は、さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人のもつ本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひも解いていこうという試み。本がいまの自分をつくったという人から、ほとんど本を読まない人の本...もっと読む

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kyarera へえ、騎手をめざしてたの、この人。 約3年前 replyretweetfavorite