阿部和重、伊坂幸太郎 第二回「世界は見た目通りとはかぎらない、とふたりとも」

"史上最強の合作"との呼び声も高い、阿部和重さんと伊坂幸太郎さんの合作小説が、11月28日に発売されます。その名も『キャプテンサンダーボルト』。現代日本文学を代表するツートップに、作品の内実と互いの肖像を訊きました。第二回は、阿部さんの語る伊坂作品の見事さ、そして驚きのシンクロニシティについて。

異例の「小説PV」も完成。3人のビジュアルアーティストが『キャプテンサンダーボルト』とコラボレーションしています。


吉開菜央×『キャプテンサンダーボルト』


奥山由之×『キャプテンサンダーボルト』


浅田政志×『キャプテンサンダーボルト』

われわれは「冷戦時代の子ども」である

アイデアを出し、各パートを書き、互いに直しを入れていく。一連の作業は相性のよさもあって急ピッチで進んだ。とはいえ、作品は最終的に900枚にも及ぶ大作となった。刊行までには相応の時間がかかり、最初に出会った日から4年の歳月を要した。

その間、ひとつの作品を通して向き合ったふたりには、作家としての共通点がたくさん見出されたよう。阿部さんはこう語る。

阿部和重「もともとそんな予感はしていましたが、合作をともに進めてみると、思ったよりも重なるところがありました。

 世界は見た目通りとはかぎらない—。根本にそんな思いがあるということが、まずは共通点として挙げられるでしょうね。わかりやすくいえば、陰謀論的な思考ということです。われわれの目に見えている世界の背後には、邪な考えがうごめいていて、表の世界を裏から操作しているのだ、という発想をふたりともするのです。

 世界への不信、そこからくるある種の人間不信、裏にある何かを読み取ろうとする意思。そういうものがいつもあり、作品に反映されているんですね。

 また、小説をつくるうえで、形式的な発想をする点も同じですね。たとえば、遠く離れたものの同一性を見出し、結びつけることによって物語を組み立てていく。ふたりとも、そうしたやり方を常に模索しています。

 伊坂さんはとりわけ、遠いものをつなげる発想と、そのアイデアを具現化する力に秀でています。伊坂作品の楽しみとして、みなさん驚きや意外性があることを挙げますね。これとこれがつながるのか! と。

 デビュー作の『オーデュボンの祈り』にしても、「案山子」と、それが「しゃべる」ということを、荒業で接続してしまった。『PK』に収められた作品「密使」では、「タイムトラベル」と「ゴキブリ」ですよ。誰も結びつけて考えそうにないものを、見事につなげるのは伊坂さんならではです。

 僕は、伊坂さんほど遠く離れたものをつなげたりはしませんが、ある異質なもの同士の共通点が見えた瞬間に、物語ができるな、とは考えます。

 たとえばデビュー作の『アメリカの夜』では、ブルース・リーと哲学を結びつけています。ブルース・リーの映画スターとしての一般的なイメージからは外れる、哲学というものをぶつけることで、ブルース・リー像をずらす。『インディビジュアル・プロジェクション』なら、フリオ・イグレシアスの歌詞を、別の意味に解釈してずらしていく。もともとある世界の問題に対してベタに付き合って物語をつくるのではなくて、意味を反転させて接続させようとしたりする。ひじょうに形式的な発想を、いつもしますね」

そうした共通点の出どころとして、阿部さんにはひとつ思い当たるところがある。

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山内宏泰

文学とは、なんなのか。文学者たちは今をどうとらえ、いかに作品に結実しているのか。言葉に向き合う若き作家たちの「顔が見える」インタビューシリーズです。

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