いいことにフォーカスすると、すべてがうまくいく
—— お二人は、どうしても愚痴を言いたくなったりすることはないのでしょうか?
亀田誠治(以下、亀田) うーん、ないですねえ。もやっとしたことがあっても、言おうとは思いません。口に出した瞬間にかたちになってしまう気がするので。その言葉が、自分の気持ちも、まわりの気持ちも、ネガティブな方に引っ張ってしまうと思うんです。ラーメン屋さんで食べたラーメンがまずいときに、「まずいなー」とか言うのはアウトですよ。
—— それは、本当にまずかったとしても?
亀田 はい。おいしくなかったら、何も言わなきゃいいんです。
渡辺由佳里(以下、渡辺) 私の夫も、食事の感想は「これ、美味しい」だけです。だから黙っているときは「これは美味しくないんだな」とわかる(笑)。ネガティブなことを口にすると、それが事実になるというか、目の前に物体として現れちゃう感じがしますよね。そして、自分の一部になってしまう。嫌なことがあっても、言わなければそのまま消えるんですよ。
亀田 そうそう。
渡辺 言わない方をチョイスし続けてたら、言わなくても平気になります。それは、私自身の経験からそう思うんです。昔は依存症みたいに、愚痴を言わなければすっとしないと思い込んでいました。でも、言わなくなったら、次の日には忘れるようになったんです(笑)。
亀田 どっちを言うかのチョイスって、大事ですよね。僕は、楽曲やアーティストについて、レコメンドはするけれど、批判はしません。いいものを伝えていくほうにフォーカスしてるんです。
渡辺 悪いものにフォーカスしても仕方がないですからね。自分がいいと思うものについて、「これいいよ」ってお薦めするほうが、喜ばれるし、楽しいし、情熱が持てます。
亀田 ダメなところを見つけるのって、簡単なんですよ。特に音楽は、音程がはずれてたり、リズムがずれていたりすればすぐわかる。それよりも、そのテイクや作品のどこがいいのかを言葉にするほうがよっぽど難しいんです。でもそこでうまくいいところを引き出せれば、すべてがいい方向に向かいます。
渡辺 それは大事ですね。
亀田 悪いところを引っ張りだした場合、できるのはその悪いところをなくすことだけですよね。全体がすごく良くなることってないんです。いいところを伸ばせば、悪いところも自動的にカバーできる。そっちのほうがいいんです。
親がネガティブなことを言い続けると、かならず子どもに影響する
—— ほめるだけでなく辛口批評ができるほうが、デキる人に見られたりする、ということはないのでしょうか。
亀田 僕はそうは思わないですね。同じように、難解であるほうが価値が高いとも思わないです。難しいことや芸術性の高いものを、可能なかぎりやさしい言葉で説明したり、やさしい音で表現したりする。それが自分のミッションだと思っています。
渡辺 私ね、亀田さんが愚痴を言わないのって、お母様の影響なんじゃないかと思ったんです。前に何かの番組でおっしゃっていたけれど、ほら、お母様がテレビを観ているときに……
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