前回のコラムで、従来マーケティングの基本戦略立案のフレームワークと言われてきたSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)のステップは、STPの代わりに「PED」(ペルソナ・体験フロー・価値デザイン)のステップを用いるニッチなポジションの企業だけではなく、今後は大手企業にも使われなくなっていくのではないか、という話をしました。
その事例として、マツダの「車体プラットフォーム」についてご紹介しながら、大手メーカーにとって生産や販売の面で規模を追う場合、ターゲットを絞らない「万人向け」の製品プラットフォームを作って展開することがその解決策となりつつあると述べました。
しかし、これを読んでおそらく「そりゃ、クルマメーカーだから製品の土台部分とボディのデザインとを切り離しても、お客さんには分からないだろうけれど、我々の業界で包み紙や入れ物などの“ガワ”だけ変えて中身は同じ商品を出すなんてあり得ない。真似しろと言われてもムリだ」と思われた方も、多いのではないかと思います。
たしかに自動車メーカーの商品開発のケースは、ほかの業界ではなかなか真似がしにくいというのも事実でしょう。しかし、だからといって「PEDマーケティングで規模化を追求するのは無理」と決めつけるのは、尚早です。今日はそのことについて少し考察してみたいと思います。
STPとPEDを「新規事業の発想法」で比べてみる
PEDで事業を構想すると、STPと比べて何がどう違ってくるのか、少し具体的に見てみましょう。
たとえば、ペットの首輪につけることにより、5分おきにペットの脈拍と体温を計測してデータを蓄積できる小型センサーを開発して販売するという事業を考えてみましょう。この小型センサーは、あらかじめ登録したスマホを持って近づくとスマホにデータを転送し、表示できるとします。
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