主題は、リズム。音楽が流れ出てくるような絵画と出合うために、今回は出かけてみましょうか。
《感情Ⅲ》 1905年 ベルン州 ©Kanton Bern (Prolith AG, Bern)
絵画とは、何を表すものなのでしょう。目の前の光景を本物そっくりに、または人物の面影をそのままに写し取ること? たしかに、現実の似姿をつくろうとするのは、もちろん絵画の大きな目的であり続けてきました。
西洋に伝わる話によれば、絵画の起源とは、古代に生きていたある女性が、遠くへ旅立ってしまう愛する男性を日なたに立たせ、その影をなぞって姿を留めようとしたことであるといいますよ。そのころから、現実そっくりのものを手元に残す手段として、絵画は使われてきたのです。
でも、それだけじゃないんですね。実際には目に見えないものに、形を与えてみたい。そんな欲求も人間にはあって、絵画はそうした願いも、ときに叶えようといたします。東京・上野の国立西洋美術館で開催中の「フェルディナント・ホドラー展」では、その格好の例を見ることができますよ。
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