新訳 世界恋愛詩集

多くの女を私は知った」ヘルマン・ヘッセ

多くの異性を知って分かること、ひとつの深い絆から分かること。ドイツの文豪・ヘッセが残した詩「ある少女に」は、その両方が描かれています。「詩人になるか、さもなくば、何にもなりたくない」とエリートの道をドロップアウトし、職を転々としたのちに書店員をしながら詩作に励んだヘッセ。はたして、菅原さんの手によってどのように超訳されるのでしょうか。
詩人天気予報」などで話題の詩人・菅原敏さんが、古今東西の詩人の作品に新訳という名のオマージュを捧げる本連載。気鋭の現代美術家・久保田沙耶さんのアートワークとともにお楽しみください。


多くの女を私は知った
多くの痛み抱きながら
多くの女を悲しませた


だが、どれだけの花々が
風のなか咲き乱れても
おまえという一輪だけを
私はやさしく摘み取るだろう
無垢なる微笑みと甘い息
おまえという一輪だけを
夢の庭へ連れていこう
私だけの秘密の場所へ
歌うたう魔法の木々に囲まれた
そこはおまえのふるさとで
花は枯れることがない
香りは絶えることがない


多くの女を私は知った
多くの傷を抱きながら
多くの女を悲しませた


いま、別れの時をむかえ
過ぎ去った青春の日々に
いま一度あいさつをして
おまえという一輪だけを
夢の庭へ連れていこう
私だけの秘密の場所へ
これほど多くを与えてくれた
最愛の妻 年老いた妻よ
ほほえみと感謝と共に
おまえという一輪だけを
不滅なるものの列に加えよう
ありがとう さようなら


「多くの女を私は知った」


ヘルマン・ヘッセ(1877~1962)

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新訳 世界恋愛詩集

菅原敏 /久保田沙耶

あまたの恋を書き残してきた、かつての詩人たちに、新訳という名のオマージュを。『新訳 世界恋愛詩集』は気鋭の詩人、菅原敏による新連載。いにしえの恋愛詩の輪郭を、菅原敏のいまの言葉でなぞっていきます。古い詩集に絵の具を落とし、新たな色で輪...もっと読む

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コメント

bleuciel0629 「夜が来たから寝たのでしょうか?」ジョン・ダン| 3年以上前 replyretweetfavorite

sugawara_bin 【さよなら月曜日に詩をひとつ】 https://t.co/KrwVaoUa21 菅原敏/久保田沙耶|新訳 世界恋愛詩集|cakes(ケイクス) おやすみ、バビルサ。 http://t.co/BRXwXgFMks 3年以上前 replyretweetfavorite

sugawara_bin 「詩人になるか、さもなくば、何にもなりたくない」 『新訳 世界恋愛詩集』今日はヘルマン・ヘッセを更新です。 「多くの女を私は知った」 https://t.co/KrwVaoUa21 のち、天気予報の準備をそろそろと。今夜24時更新です。roomieにてお会いしましょう。 3年以上前 replyretweetfavorite

sayakubota 【不滅おばあさんと更新】 https://t.co/1znb4Q0iG9 菅原敏/久保田沙耶| 3年以上前 replyretweetfavorite