宝の山のなかで事業アイデアを育てた
藤野英人(以下、藤野) 前回は、大学病院をやめてバックパッカーの旅に出たというところまでうかがいました。旅の中で、その後やるべきことは見つかったんですか?
矢﨑雄一郎(以下、矢﨑) バイオテクノロジーに関連するなにかの事業を立ち上げよう、というふうに考えました。当時は、今のような免疫関連ではなく、再生医療や遺伝子診断・治療というところに興味があったのですが、とにかく、そういう方面のことをやろうとおもったんです。でも、ビジネスって医療従事者にとっては、まったく未知の世界なんですよね。そこを、いちから勉強させてもらうために、設立間もない創薬系のバイオベンチャーに入社しました。
藤野 その企業では何を担当されていたんですか?
矢﨑 企業からは大学や研究開発やドクター向けの営業の即戦力となることを期待されていました。私の経歴から考えると当然ですよね。でも私はビジネスについて経験を積みたかったので、事業企画や経理財務などに関わる部署で働かせてもらうよう懇願したんです。それまでワードやパワーポイントもろくに使ったことがなかったし、名刺交換だってちゃんとしたことがなかったのに、希望を聞き入れてもらって本当にありがたいなと今でも思います。
藤野 医師を続けていたら、経験しないことばかりだったわけですね。
矢﨑 「とにかくお金はいらないから、ビジネスの第一線で働かせてもらいたい」と熱く語ったのを覚えています。
藤野 自分の事業を、その会社の中で立ち上げるということは考えなかったのでしょうか。
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