自分にモノづくりは向いてない、と思っていた時代【第1回】

『ゴッドタン』をはじめ、数々のバラエティ番組にたずさわり、芸人から素人まで、さまざま出演者の魅力を引き出す企画づくりをしてきたテレビ東京・佐久間宣行プロデューサー。佐久間さんの仕事術がつまった新刊『できないことはやりません~テレ東的開き直り仕事術~』の刊行を記念して、特別インタビューが実現しました。「自分にクリエイティブな才能はない」と思っていた佐久間さんがプロデューサーとして自信を持てるようになった理由とは?(全6回)

「クソつまんない」と妹に漫画を破かれて

— 本の出版おめでとうございます。『ゴッドタン』、『ウレロ☆未確認少女』、『トーキョーライブ』など、エッジの効いた作品を世に送り出してきた佐久間さんですが、そうしたお仕事のなかで、「できないことはやりません」というテーマはどうやって浮かびあがってきたんでしょうか?

できないことはやりません ~テレ東的開き直り仕事術~
できないことはやりません ~テレ東的開き直り仕事術~

佐久間宣行(以下、佐久間) 最初は、いかに自分の好きなことを実現しながら会社を儲けさせるか、というテーマで書こうとしていたんですよ。でも改めて振り返ってみると、自分にクリエティブな才能はないと思っていた学生時代や駆け出し時代のことが思い出されて。その頃の経験について書いていくうちに、自分が今のような働き方ができているのは、「できないこととできることを見極めて、自分の武器を研いていけたからだ」と気づいた、という感じですかね。

— 「クリエイティブな仕事は特別な人がやるもの」と思っている人たちは多いと思うのですが、そうした人が励まされるような本だと感じました。とはいえ、今の佐久間さんしか知らない人間からすると意外な部分でもあります。昔から「自分に才能はない」と思われていたのですか?

佐久間 そうです。中高生の頃から、テレビも演劇も漫画もなんでも好きだったけど、「東京はすごいんだろうなあ」と思うだけの、どこにでもいる普通の少年でした。住んでいたのも田舎でしたしね。クリエイティブな業界にどうしたら入れるのか、何を勉強したらいいかもわからない状態でした。

— 本のなかでも、中学生の頃、描いた漫画を妹さんに酷評されたというエピソードを書かれていましたね。

佐久間 地球にやってきた宇宙人が、弱小高校の野球部に入って甲子園を目指すという話で、タイトルが『甲子園クライシス』(笑)。

— けっこうおもしろそうに聞こえるんですが(笑)。

佐久間 でもその原稿を妹に見せたら、「クソつまんない」って罵られて、しかも原稿を破かれたんですよ! 当時はクリエイターになりたい気持ちはありつつも、漫画も小説も、天から授けられた才能を持っている人間が作るものだと思っていましたね。

— 大学では広告研究会に所属されていたとのことですが、そこでも同じような感覚でしたか?

佐久間 そうですね。同期にすごい人たちがたくさんいましたから。『ゆれる』の西川美和監督とか、『リアル脱出ゲームTV』プロデューサーの渡辺くんとか。

— それは、そうそうたる方たちですね。

佐久間 才能のある人って、見たらすぐわかるんですよ。圧倒的なんです。僕は性格がハキハキしているからよく仕切り役をやらされていたんですけど、彼らと自分は違うと思っていました。僕じゃなくて、彼らみたいな人たちこそがクリエイティブな仕事をやっていくんだろうなって。

— 自分にクリエイティブな才能はない、とは思っていたものの、就職活動ではやはりテレビ局を受けられたんですね。

佐久間 実は最初は記念受験的な感じでした。最初にフジテレビを受けたんですが、フジテレビの選考時期って当時他業界よりも早くて、腕試しのつもりだったんです。しかも、制作には向いていないと思っていたから事業部で受けました。でも、フジテレビの何回目かの面接で、「絶対制作の方が向いている」と言われて。

— おお。その方はどうしてそう思ったんでしょう。

佐久間 面接の場に、僕ともう一人、事業部志望の女の子がいたんですね。その子は帰国子女で、たくさんの特技を持っていて……。彼女の話がものすごくおもしろくて、僕がついつい「それ、すごくないすか!?」なんて彼女に話しかけちゃったんですよ。それを見た面接官の方がげらげら笑って、「面接中に隣の人に興味持てるような奴は絶対制作向きだ」と。

— たしかに、面接中は普通自分のことでいっぱいいっぱいですよね。

佐久間 それで制作で受けてみようと思って、エントリー締切に間に合うのがたまたまテレビ東京だったんです。

ハプニングの時ほどわくわくする

— 制作で内定を取り、無事テレビ東京のAD(アシスタントディレクター)になった後も、しばらくは「制作向きでないのでは」という不安に襲われたそうですが。

佐久間 「向いている」とはなかなか思えませんでしたね。しばらくして、やっと評価されたのもFD(フロアディレクター)としての腕前で。FDっていうのは、番組の収録現場で全体のタイムスケジュールを見ながら進行管理をする仕事なんですよ。これは制作的な仕事じゃない、番組のクオリティには関係ないんじゃないか、とも悩みました。
 でも、評価されたからにはまずはこれをちゃんとやってみようと思って。何か一つは武器があるようにしないと周りの人には信用してもらえませんから。

— それは、やはり指示が的確だったり、明るく現場を仕切れるというところが評価されたのでしょうか。

佐久間 そうだと思います。特に徳光和夫さんには直々のご指名を頂くようになって、徳光さんの番組にはいろいろと呼んでいただいたり、おかげで選挙特番の現場なども経験できました。それで自分が生放送に強いってことにも気づきましたね。

— 具体的にはどういうところが生放送に向いていたんですか?

佐久間 生放送の収録ってどうしてもスケジュールが押すしトラブルも発生しやすいんですが、「台本のこのページはカットしても話は通じる」なんて判断が、僕は瞬時に下せる方だったんです。

— どうしてそういうときに落ち着いて判断できるんでしょうか。

佐久間 おもしろくなってきちゃうんですね(笑)。予定外のことが起きた方がわくわくする。ハプニングを求める性格というか。そういう性格が、僕が作る番組にも影響していると思いますね。

— たしかに『ゴッドタン』をはじめ、即興やアドリブのやりとりがいつのまにか突き抜けたおもしろさを発揮する番組ばかりですね。

佐久間 もちろん事前に入念な準備はするんだけれども、芸人さんがその場で始めたことの方が面白かったら、すぐに「準備したプランはやらなくていい」と判断する。目の前の出来事が、自分が用意したものを越えていく瞬間にこそ、僕は興味があるんです。

— 現場進行という仕事をきっちりこなすことで、そういった「予想を超えるおもしろさ」をつかむための好奇心や判断力が武器として磨かれる結果となったのですね。今、制作過程において一番やりがいや楽しさを感じるのはどの部分でしょうか。

佐久間 僕は編集している時が一番幸せですね。

— そうなんですか。テレビ番組の編集作業は、かなり大変な仕事だと聞いたのですが。数十分のVTRをつくるのに、時には三日三晩編集室につめることもあるとか……。

佐久間 あとちょっとで仕上げ終わるなっていうその瞬間がいいんです。まだ誰も知らない、ものすごくおもしろい作品が僕だけのものとして現れる、その時間が大好きです。

— それは佐久間さんに編集の才能があるから、というのもある?

佐久間 いや。編集って唯一、生まれつきの才能みたいなものが関係ない作業だと思うんですよ。撮った映像をじっくり見返して、いい素材を見つける根気と誠意がものを言う。僕は「TVチャンピオン」っていう、カメラに写り慣れていない素人さんを撮る番組をやって、素材探しに時間をかけることの意義を痛感しました。その経験が、僕の作るいろいろな番組に良い影響を及ぼしているんじゃないかと思いますね。

構成:小池みき

次回は11月25日(火)更新。映画『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ』裏話が明らかに!

テレ東のバナナ社員「ナナナ」の声を担当する博多大吉さんのエッセイ「疑心暗鬼」、これからのお笑いに必要なものを探るマキタスポーツさん×久保ミツロウさん対談「一億総ボケ社会を目指して」など、すべての記事が読み放題になる、cakesご購読はこちらからどうぞ。


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この連載について

できないことはやりません—テレビ東京プロデューサー・佐久間宣行インタビュー

佐久間宣行

『ゴッドタン』をはじめ、数々のバラエティ番組にたずさわり、芸人から素人まで、さまざま出演者の魅力を引き出す企画づくりをしてきたテレビ東京・佐久間宣行プロデューサー。佐久間さんの仕事術がつまった新刊『できないことはやりません〜テレ東的開...もっと読む

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コメント

chaosbrave こちらも後で読む。 6年弱前 replyretweetfavorite

veggy_ 面白かった連載はこちら(`・ω・´)つ   6年弱前 replyretweetfavorite

show6volta 「クリエイターになりたい気持ちはありつつも…天から授けられた才能を持っている人間が作るものだと思っていました」/ 6年弱前 replyretweetfavorite

koiyaro “【第1回】 約6年前 replyretweetfavorite