最終回】 国内歴史編—日本を動かす名門一族の秘密 資産継承の極意は変化にあり

日本全国にはいまなお地元経済に強い影響力を持った名門一族が存在する。江戸時代から代々続く名家も少なくないというが、彼らはどのようにして資産や事業を継承してきたのか。

 「企業経営者への講演で『天皇の経営論』のテーマが好評です。皆さん、事業継承の問題に悩んでいるので、125代にわたって2000年以上継承してきた皇室の歴史(神代を含む)に学ぶことが多いのでしょう」

 そう話すのは、憲法学者で皇室の歴史にも詳しい竹田恒泰氏。自身も竹田宮恒徳王を祖父に持ち、明治天皇の玄孫に当たる皇族の血統だ。

竹田宮恒徳王の孫の竹田恒泰氏

 企業オーナーや投資家など現代の富裕層が築いた財産や地位は、かつての朝廷や大名の誇った栄華に比べようもなく、また継承してきた歴史が違う。現代において特権階級から退いたとはいえ、富や権力を築き、それを維持していくことの重みを知り、貴重な教えを継いでいるはずだ。そう考える経営者は少なくないようだ。

 ただ実際は、皇族の系統だからといって、自動的に権力や財産を継承できたわけではない。

 歴史の中で、何度となく荒波にもまれている。最大の危機は1947年の日本国憲法制定に伴い、秩父宮、高松宮、三笠宮の3直宮家を除く11宮家51人が皇籍離脱を余儀なくされたことだろう。このとき竹田氏の祖父、竹田宮恒久親王も降下した。

 皇室を離れるのに際し、当時の金額で数百万~数千万円の一時金が支給され、また、都内の一等地の邸宅や別荘が残されている。現在の不動産価格に換算すれば莫大な金額になるはずだ。なにせ、旧竹田邸にしても、今のグランドプリンスホテル高輪がある1万平方メートルの敷地があったという。さぞや悠々自適の暮らしをしたのかと思うとそうでもない。

 旧皇族に支払われた一時金や土地の売却益を目当てに持ち込まれた投資話に乗って、財産をそっくり失った宮家も少なくなかったからだ。

グランドプリンスホテル高輪の貴賓館。かつて宮家・竹田宮の邸宅だった。Photo:KYODO

 竹田氏は「古い体質なので、お金の話を『はしたない』と捉え、上手に資産運用したり、事業を起こして成功したりしている例はごくまれ。むしろ、そうした家を『あそこはご商売がお上手で』という、やっかむというよりさげすむ風潮がある」と指摘する。その一方で、皇籍離脱した旧皇族の厳しいその後を知っている竹田氏は「生き残るには進化しなければならない。進化するということは、何を守り、何を捨てるかが重要になる」とも。それを実践してきたのが、今でも地方財閥を形成している例が比較的多い大名出身の旧華族や地方の資産家たちかもしれない。

 日本全国で代々続くこうした名家の一族は、戦前から戦後、高度成長期、バブル崩壊を経て平成の時代に至るまでの激動期をどのように生き抜き、資産を継承してきたのか。

 『日本の地方財閥30家』(平凡社新書)などの著作があり、全国の資産家家系に詳しい菊地浩之氏に話を聞いた。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

週刊ダイヤモンド

この連載について

初回を読む
富裕層のカネと知恵【5】~古今東西“超絶”富裕層の教え

週刊ダイヤモンド

巨万の富を築いた海外の大富豪や代々続く地方の名家──。古今東西、本当の富裕層たちはいまなお秘密のベールに包まれた存在だ。彼らはどのような生活をし、いかにして資産を継承してきたのか。※この連載は、2012年10月20日号に掲載された特集...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません