福島だけではない? 人口減少の絶対的なヤバさ

よく震災・原発事故に絡めた形で、福島の人口減少が議論されます。しかし、果たして本当に他県と比べて人口減少が進んでいるのでしょうか。そして、福島の人口減少は311以降に起こったことなのでしょうか? 社会学者の開沼博さんはこれらに疑問を呈しながら、震災よりはるか前から進行している、この国の抱える大問題を指摘します。

「人口流出」よりも「人口減少」に注目する

 前回は「福島は、みんな避難しまくりで、人口が流出している!」というステレオタイプなイメージがひとり歩きして、だいぶ実態とかけ離れた「フクシマ」像を形成しているのではないか。そして、その誤解の元で本来把握されるべき問題が放置されているのではないか。そんな話をしました。
 この問題は極めて根深い。今回はその根深さをさらに見て行きたいと思います。
 そして、その根深さを正面から捉えた時に、「福島の人口減少問題」からより普遍的な「日本の人口減少問題」が見えてくることになります。

 前回、福島県と隣接する茨城県の人口減少の事例をあげながら「人口減少は福島県だけの問題なのか」と問いかけました。今回はさらにその問を深めていきましょう。

 前回との違いが二つあります。
 一つは、「人口減少」への注目です。ここまでは「人口減少」と「人口流出」の両方の言葉を使ってきました。
「人口減少」とは、引っ越していなくなるような「社会減」と、そこで暮らしていた人が亡くなるような「自然減」の両方を含みます。
「人口流出」とは、「社会減」のみです。
 紛らわしいので、ここからはより広い意味である「人口減少」に統一して議論を進めていきます。

 もう一つは、震災後に余儀なく生まれた「避難者」ではなく、震災前から現在までの連続性を見るために、国勢調査に基づいた「推計人口」を見ていきます。
 前回は「県外避難者」の数を元に議論をしました。避難者の中には住民票を避難先に移している人もそうでない人も含まれます。今回は国勢調査を元に推計された人口を元にした議論ですので、少し話は変わります。つまり、避難ではなく、進学や就職、会社の指示による転居なども含まれますので、人の出入り数はもう少しブレが大きくなります。

福島の人口は意外と持ちこたえている?

「人口減少は福島県だけの問題なのか」
 これをかんがえるときに、まず確認すべきなのは、そもそも、「日本全体が人口減少社会である」ということです。

 日本全体が人口減少社会に入ることを国が明確に示したのは、2005年国勢調査でした。この年、明治以来はじめて、推計人口が1年間で2万人ほど減少しました。 
 その後、一時的に持ちなおすものの、2011年からは完全に人口減少が継続的に続く状況になってきました。偶然にも、震災があった2011年がその年だったわけですね。

 ただ、注意すべきなのは、都会ではそうではなくても、地方では人口減少はもっと前から進んでいたということです。
 例えば、平成22年国勢調査報告書の「人口,人口増減数及び人口密度-都道府県(平成12年~22年)の表」によると、2000年から2005年の5年間で見て、既に北海道・関東地方・東海地方・関西地方・福岡など大都市圏を除き、半数以上の県が既に人口減少していることがわかります。

 10年以上前から地方は既に酷い人口減少状態に入っていたわけですね。

 じゃあ、2011年より前、10年間の福島県を見てみましょう。
 2000年に212万人だった人口が2005年に209万人と、5年間で1.7%(約3万人)の人口減少、さらに2010年には202万人になっていますから、また残りの5年間で3%(約7万人)の人口減少です。
 やはり福島県もバリバリの人口減ですね。それで、震災があっていまに至るわけです。

 では、現状どうなっているか。
 2014年10月01日現在の福島県の推計人口は、193万6630人です。2010年から4年間で約9万人減です。ここで数字に敏感な人は「あれ?」と気づくわけですね。

2000年 212万人
2005年 209万人
2010年 202万人
2014年 193万人

 それぞれの間の減少率を計算すると、1.7%(3万人)、3%(7万人)、4.8%(9万人)。

 人口減少は進んでいるが、必ずしもそのスピードが急加速しているわけではない。
 実は、2010年10月と2011年10月のを比較すると、人口は202.9万人から199万人へ一気に4万人近く減っていて、この年だけで実は減少率は1.9%になります。それを差し引いてみると、なおさら「意外と持ちこたえている」ということがわかります。

震災の影響が少ない秋田・青森・山形のほうがヤバイ

「いやいや、他の県と比べたら絶対福島はヤバイはずだ! 震災後、現在に至るまで一気に5%もの近くもの減少率になっているんだぞ!」
 そういう方もいるでしょう。
 じゃあ、他の県を並べてみましょう。同じ東北の中で、震災の影響が少なかった秋田県はこうです。

2000年 118万人
2005年 114万人
2010年 108万人
2014年 103万人

 それぞれの間の減少率を計算すると、3.7%(4万人)、5.2%(6万人)、4.8%(5万人)。

 実は、2014年時点での日本の人口減少のワーストスリーは秋田、青森、山形です。そんな秋田県、秋田の方には大変申し訳ない感じもしますが、単純に福島よりも人口減少という意味ではヤバいですね。青森や山形もそうです。

 じゃあ、東北から遠いところでヤバいところも見てみましょう。
 秋田、青森、山形についで人口減少がヤバイのは高知、和歌山です。じゃあ、高知県を見るとこんな感じ。

2000年 81万人
2005年 79万人
2010年 76万人
2014年 73万人

 それぞれの間の減少率を計算すると、2.2%(2万人)、4.0%(3万人)、3.5%(3万人)。

 こちらもなかなかですね。
 ここで詳しく説明することはできませんが、秋田県は知事が先頭に立って「人口問題対策連絡会議」を立ち上げています。また、高知では、移住者受け入れに行政や地元NPOなどが積極的であり、そういった成果が徐々に出てきている状況もあります。

福島の人口減少は「平常運転」に戻りつつある

 もう一度、福島の話に戻りましょう。
 2011年より5年前から現在までの福島の人口減少率を並べてみます。

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俗流フクシマ論批判

開沼博

311福島第一原発事故から3年以上経ちますが、今フクシマはどうなっているのでしょうか? いまだ具体的な数字や実態に基づかない情緒的な議論が溢れる中、この連載の目的は、フクシマの問題について「論理とデータを通した議論のベースの再設定」す...もっと読む

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megadeth0907 人口が増えた都道府県があるのなら教えて欲しいw #ミットモナイヤー https://t.co/udoZQXwnEA https://t.co/2THyaU5ZXL 3年弱前 replyretweetfavorite

higuma_saikyou 人口減少幅全国で最小 2年連続 本県0.24ポイント 流出に落ち着き | 県内ニュース | 福島民報 http://t.co/5hNTicwKkC @FKSminpo ✳︎開沼さんの「 3年以上前 replyretweetfavorite

JPN_LISA 福島が単純化されてしまうのは,著者の描く「物語」に沿った当事者しか見ていないからだ。 4年弱前 replyretweetfavorite

JPN_LISA 女川町も原発のせいで人口流出している,という様な記事を書かれた事があったなあ。津波なんだけどな。 4年弱前 replyretweetfavorite