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サラフィストに対抗してフーリガンが暴発
フーリガンとは、特定のサッカーチームのファンを自称し、スタジアムに徒党を組んでやってきて乱暴狼藉を働く暴力集団のことを言う。ドイツには、フーリガンにとりわけ好かれてしまったプロのサッカーチームがいくつかあり、彼らの試合日には、朝から大量に出動する機動隊がさらに増強され、町は物々しい雰囲気になる。いくら国民の愛するスポーツとはいえ、この厳重な警備が税金で賄われているかと思うと、かなりバカバカしい。
10月26日、日曜日、そのフーリガンが暴発した。ケルンでのことだ。ただし、この度はサッカーの試合ではない。サラフィスト(イスラム・スンニ派の過激グループ)に対抗する抗議デモをおこなうと称して、ケルンの中央駅周辺に集結したのだった。
サラフィストはどんどんシンパを増やしており、現在、ドイツに7000人近くいるという。元々、すでにドイツ国籍を所得しているアラブやトルコや旧ユーゴ出身のイスラム教徒がたくさんいる国だ。そういう人たちのごく一部と、普通のドイツ人のごく一部が、サラフィストの宣伝する過激な宗教観に心酔してしまうらしい。
そして、挙句の果て、義勇兵としてシリアに赴き、「イスラム国」のために戦うといった現象も起こっている。ドイツ国籍を持ったドイツ人が、外国で殺戮に加わっているというのはれっきとした罪だし、戻ってきた彼らがテロを働く可能性もなきにしもあらずだし、喫緊の社会問題だ。
とはいえ、26日のデモを見るならば、彼らフーリガンの目的はサラフィストの糾弾だけではなさそうだ。外国人排斥のプラカードが掲げられているところをみると、極右カラーは明白で、しかも、暴力的なエネルギーが満ち溢れている。案の定、デモはあっという間に、警官が49人も負傷する大混乱となった。
日本人が想像できないのは、ドイツのフーリガンの獰猛さだ。日本のスタジアムで小競り合いをしている人たちとは、まるで質が違う。身体のごつさはもとより、筋肉隆々の腕には刺青、目つきは血に飢えた猛獣のようで、スキンヘッドのピカピカ頭に刺青をしているのもいる。とにかく怖い。こういう人たちの間に紛れ込んだなら、日本人はどんな極悪人でも華奢で、無害に見える。しかしドイツでは、この獰猛そうな人たちが、普通に町を歩いている。