有働アナは「40代独身」を背負わない
アーティストの村上隆に「私たちでも描けそうな絵が、何億円にもなるというのは、計算されて描かれているんですか?」と物怖じせずに投げかけるNHK有働由美子アナは今、いろんな人から「この人は味方だ」と思われている。実際に交友もあるそうだが、マツコ・デラックスの毒素に近いものがある。つまり、フラットな自分から投じられる意見が世間様には刺激物と受け取られているのですが、それを私は気にしておりません、というスタンス。マツコは「私たちみたいなオカマは」とその業界を背負おうとするが、有働アナは「40代独身」を背負おうとしない。40代独身の私、の話をいくらでもするけれど、それを丸ごと背負いはしない。
コメンテーターが「We」を使い、アナウンサーが「I」を使う逆転現象
「30代はあっという間に過ぎていった」と回想する人と、「30代はあっという間に過ぎてくからね」と諭してくる人には雲泥の差がある。有働アナ初のエッセイ集『ウドウロク』(新潮社)を読むと、この方は圧倒的に前者。つまり、自分の話しかしないし、それを「自分たち」の話にしないし、それを踏まえてこうあって欲しいと誰かに向けることをしない。『あさイチ』での有働アナが受け入れられているのは、セクハラ・出産・介護・性といったデリケートな話題に対して、コメンテーターが「We」で返してくるのに対して、アナウンサーが「I」を使ってくるという逆転現象を起こしているから。あ、ちなみに、最近こういう方法で新著を紹介するとすぐに「ステマだろ?」と揶揄されるのでわざわざ早々に批判しておくが、このエッセイ集の野暮ったい造本、中小企業経営者が大枚をはたいて作った自費出版の自伝のような、愛想に欠ける本文写真レイアウトはつくづく残念だ。
V6・井ノ原快彦との高め合い
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