捨てる勇気がなければ、新たな幸せは得られない
—— 『幸転力』には、「幸せになるには、正しい選択と決断は大切」と書かれていました。たしかに、仕事、結婚、出産……と、女性にとって、いつどんな選択と決断をするかはとても重要だなと。だからこそ、難しいし、選べないという人も多いです。
吉瀬美智子(以下、吉瀬) なかなか決断できない女性は多いですよね。でも、決断できないっていうのは、自分の人生に対する目標やイメージがないからなのかなと思うんです。
—— なるほど。
吉瀬 やっぱり、逃げずに本気で自分と向き合って深く考えてみる。3年後、5年後はどうなりたいのか、明確な目標を持って、現状を正しく把握すれば、今、やるべきことって見えてくると思うんです。たとえば、35歳までに結婚したいのなら、それまでに何をすればいいのか。まだ、付き合っている相手もいないのなら、出会うための具体的な行動をとらないと、いつまでも現実は動かないですよね。
頭では問題点がわかっているはずなのに、行動しない。女性って、友だちに不満を言うだけで満足しちゃって、結局、動かない人も多いなって思います。
—— 吉瀬さんは、目標にむかって常に行動している人ですよね。
吉瀬 そうですね。私はリアリストですから、前だけを見て進んでいます(笑)。だから、「結婚したい。子供が産みたい」と言いながらも、出会いがないと嘆くだけで動かない人とか、彼はいるけれども、「この人でいいのかわからない」って言いながらズルズル付き合っている女性を見ると、「時間がもったいない! 問題の本質から逃げないで」って言いたくなる。
—— はい。
吉瀬 例えば、今の恋人と添い遂げるのは無理だと心の奥で気付いているのなら、別れるしかないのに。そんなシンプルな決断もできないのは、甘さとか弱さだし、逃げでしかないと思います。
—— おっしゃるとおり。胸が痛いけど、響きます(笑)。
吉瀬 自分の考え方とか行動を一度、ゼロベースに戻してみることも必要だと思うんです。これまでの自分を疑ってみる。これまでの思考や行動のパターンが何か悪いサイクルを引き起こしているのかもしれない。
私は自己啓発本も好きですけど、成功している人の本を読んだり、幸せな人の話を聞いていると、みんな似たような考え方ですし一貫しているなと思うんです。当たり前のことを丁寧に、自分に正直にきちんと生きている。
—— みなさん、まっとうですよね。
吉瀬 そうだと思います。日々、本気で生きていたら、今、決断するしかないという場面は訪れるんですよ。そういう自分にとってのターニングポイントで潔く決断できないと、幸せって逃げちゃう気がします。
私がモデルと女優の二足のわらじをはき続けていたら、今の状況にはたどりつけなかったのと同じ。あの人もこの人も、あの仕事もこの仕事も……みたいな感じで保険をかけながら生きていると、神様はチャンスをくれないと思う。
—— わかる気がします。
吉瀬 幸せになるには、潔くあること、不要なものは捨てる勇気を持つことです。何かを始めること、何かを変えることってとても大変だけど自分次第。年齢を理由に焦ったり、諦めたりしなくていい。いつからでも人生は変えられると思います。
本気で子供が欲しいなら早いほうが良い
—— 本の中では一貫して、「人生は、ゆっくりマイペースでいい」と伝えながらも、出産に関しては、「どうしても子供が欲しいと思うなら、スタートは早いほうがいいですよ」と書かれていたのが、とても心に残りました。
吉瀬 そこは、とても伝えたかったんですよね。余計なおせっかいかもしれないけれど、自分が経験したからこそ、伝えたかった。
—— 38歳での出産という、ご自身の経験があったから。
吉瀬 そうです。私は、「いつか子供が欲しい」と思っていたけれど、結婚した年齢が35歳だったし、ちょうど連続ドラマの撮影中で休みをとれるような状況でもなかった。早く産みたいと思いながらも、仕事をたくさんいただけるようになった時期でもあり。せっかく求めていただいているのに、自分の都合で休みたくない。
—— 仕事とプライベートの板挟みですね。
吉瀬 でも、「このままだと時機を逃すかもしれない」と思って仕事をセーブすることを決断しました。いわゆる“妊活”ですよね。でもね、この問題と向き合ってはじめて、子供ってそんなに簡単にはできないものなんだということを実感しました。
“子どもは授かり物”ってよく言いますけど、欲しい時にすぐに得られるわけじゃない。本気で子供を望むなら、きちんと計画して考えて行動しないと、誰でもすぐに授かれるものじゃないんですよね。年齢を重ねれば、重ねるほど、その確率はどんどん低くなるのも現実です。
—— たしかに、妊娠・出産の現実と向き合ったことのない女性は、漠然と「望めばなんとか妊娠・出産できるものだろう」くらいに思っている。芸能人など40代の高齢出産の人も増えているから、「40代でも産めるんだ」と楽観的に思っている人も少なくないですよね。実際は、とても確率は低いですけど。
吉瀬 今の30、40代の女性は見た目も心も若いじゃないですか。でも、体の中は若いままじゃないですから。私も最初はすぐに妊娠できると楽観的に思っていました。でも、なかなか授からなくて焦りを感じ始めた頃、婦人科で体内年齢を調べる検査を受けてみたんです。そうしたら、私は、実年齢よりも、体年齢が上だったんです。
—— そうだったんですね。
吉瀬 正直、自分では見た目は実年齢より若いと思っていたし、何の根拠もなく、きっと体の中も若いだろうと信じていたのに……。卵巣とか子宮とか内臓の年齢は、見た目の年齢と比例しないことを知って、とても不安になったし、ショックを受けたんです。私のように勘違いしている人も多いはず。これはとても大事なことだから、伝えなきゃと。
—— 本書を読んで、伝えたいという想いの深さが伝わってきました。
吉瀬 こういう話題はすごくデリケートですよね。早く子供が欲しいと思っても、相手がいない方もいるかもしれないし、誰かを傷つけてしまうかもしれない。でも、自分が身をもって思い悩んだことだし、それを伝えることは大切かなと思ったので書かせていただきました。
さらなるインタビューが、dmenuの『IMAZINE』でつづいています。
結婚相手を間違わないために必要なこと
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吉瀬美智子(きちせ・みちこ)
1975年福岡県生まれ。モデルを経て、2007年女優デビュー。2011年2月「エランドール賞」新人賞を受賞。2010年に結婚、2013年に第一子を出産。
構成:芳麗 撮影:小島マサヒロ
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