「不倫なう」と「不倫経験」の分化
「不倫は文化」と言ってのけた石田純一は、結婚した後に「不倫は文化遺産」と修正している。上方修正なのか下方修正なのか分からないが、「不倫なう」と「不倫経験」の分化に成功したわけである。復帰した矢口を擁護した勢力が、復帰番組の司会の宮根誠司であり、その模様を報じたテリー伊藤と小倉智昭だったことは、矢口にとっては分が悪かった。
彼らが発揮してくる寛大さって、「男と女なんてそんなもん」という経験と達観からのみ導かれる。不倫経験を人生にじんわり染み込ませた上で肯定するのは、どれだけ不倫してもなぜか「芸の肥やし」で済まされる歌舞伎役者のベクトルに近い。今回、矢口がひとまず望んだのは石田純一よろしく不倫の文化遺産化だったはず。となれば、下手に不倫を人生に滲ませて肯定しようとしたオヤジたちの弁舌はありがた迷惑なのだ。矢口は味方に恵まれなかった。
芸能界はイメージで浮遊する
「銀行に立てこもった犯人が現行犯逮捕。犯人はまさかの女性」という事件は、「銀行の監視カメラに映っていた男を後日逮捕した」事件よりも数百倍のインパクトを持つ。矢口の案件はこれと同様の膨らみ方をした。(犯ではないが)現行犯だったこと、男性主導ではなく女性主導であったこと、これに尽きる。要するに「不倫」にあらゆるビビットなトッピングが盛られていただけにすぎず、特段の重罪を課す企みが本人にあったわけではない。
ダンナが早く帰ってきちゃった、という安っぽい脚本の実写化に配役された矢口真里。彼女は復帰の会見で「今が最悪、これ以上イメージは下がらないと思う」と発言したが、極めて冷静な分析だと思う。生放送の冒頭で「どういう顔をしてワイプに映ればいいのか分からない」とも発言していたが、この人は、自分という存在、あるいは芸能界という場所が、イメージで浮遊するものだと熟知している。
不倫の鮮度を保とうとする不倫された側
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