大図まこと(クロスステッチデザイナー)→森岡督行(森岡書店)Vol.1 なぜ古書店を始めたのですか?

今回インタビュアーとしてカンバセーションズに初登場するのは、レトロなゲームのグラフィックやピクセルアートを思わせるタッチを、クロスステッチという刺繍技法でポップに表現する大図まことさん。そんな大図さんがインタビューするのは、写真集や美術書を扱う書店として茅場町にあるビルの一室で開業し、その後8年間にわたり国内外のファンから支持され続けている森岡書店の森岡督行さん。先日、これまでの活動について綴った『荒野の古本屋』を出版するなど、ますます注目度が高まっている森岡さんに、大図さんが聞きたいこととは?

どうして就職しなかったのですか?

Q.先日書かれた『荒野の古本屋』は、晶文社の「就職しないで生きるには」シリーズとして出版されていますが、そもそも森岡さんが若かった頃、就職という選択をしなかったのはなぜなのですか?

森岡:私はもともと、太平洋戦争の頃の歴史や政治の流れなどを結構真面目に勉強していました。同級生には就職をしない人は少なかったと思うのですが、その頃自分は色々思い悩んでいたんですね。当時、環境問題などが話題になっているなかで、自分も経済活動に参加して、環境に良くないことに関わるというのはどうなんだろうという思いがありました。その一方で、生きていくためには就職をして、お金を稼がないといけないですよね。その狭間でかなり思いつめていたのですが、結局それが極端な形となり、就職なんかしていられないという思いに至ったんです。

Q.真面目なのか何なのかよくわからないですね(笑)。でも、二十歳くらいの頃なんて普通は自分のことしか考えないと思うんです。その時に日本の将来のことまで考えていたなんて凄いですね。

森岡:もちろん、単純に働きたくないというモラトリアム的な部分もあったでしょうし、自分の中で色々なものが混ざり合っていた時期だったんだと思います。当時は、世界の行く末については不安を感じていましたが、自分自身の就職についてはどうにかなると思っていたような気がします。当時そういう考えを持つようになったのは、哲学の本を乱読するようになったことがきっかけだったのですが、ある意味病的になっていたところもあったのだと思います(笑)。本を読むのは昔から好きでしたが、神保町をウロウロするようになってからその度合いが強まっていきましたね。

Q.僕は森岡さんよりも5歳ほど年下で、まさに就職難の時代だったんですね。僕自身、就職試験を何十社も受けましたがすべて落ち、最終的に酒屋でアルバイトをするようになりました。そういう時期が3年ほどあったのですが、その間はとても不安で。もちろん親からも色々言われますし、周りの友人が就職したりすると、話もだんだん合わなくなってきてつらかったですね。

森岡:自分の場合は幸運だったと思います。たまたま新聞で神保町の古本屋さんの求人記事を見つけることができたんです。当時僕は中野に住んでいたのですが、妹も近所にいて、その日はたまたま妹の家に行ったんです。妹は新聞を取っていたので、それを何気なく見ていたら、その後働くことになる一誠堂書店の求人広告が載っていました。実はその当時、メディアの情報を遮断して、昭和16年の朝日新聞を読んでいたんですね。すべての情報を切り替えることで、その時代に行った気分が味わえるんじゃないかと思ったんです。そうしたら、太平洋戦争開戦の日の新聞に、一誠堂書店の広告が出ていて。その1ヶ月後にリアルタイムの新聞で求人募集を見つけて、とても不思議な体験でしたね。

なぜ古書店を始めたのですか?

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