この本を読んでも結婚できません!【前編】

編集者であり文筆家の岡田育さんが、自身の結婚体験について赤裸々に語った『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)。単行本発売を記念して、三省堂書店神保町本店でジャーナリストの津田大介さんとのトークイベントが行われました。cakesではその内容を三回にわたってお届けします。岡田さんと、その夫であるオットー氏(仮)両方と親しく、ときに「岡田さんの結婚相手では」と誤解されることすらある津田さんが、ふたりの結婚生活にもびしびし切り込みます。

連載するつもりじゃなかった

岡田 みなさん、本日は『嫁へ行くつもりじゃなかった』(嫁つも)刊行記念イベントにご来場いただき、ありがとうございます。今日は津田大介さんをゲストにお呼びして、お話していきます。

嫁へ行くつもりじゃなかった
嫁へ行くつもりじゃなかった

津田 今日はよろしくお願いします。

岡田 お忙しい中、ありがとうございます。あ、最初に言っておきますが、津田さんがゲストだからといって、私の結婚相手である「夫のオットー氏(仮名)」が津田さんというわけではないですよ。本日はオットー氏の出演はございません!

津田 岡田さんが結婚してしばらく経ったのに、まだ時々勘違いしている方がいますよね。僕はたしかに、もともとオットー氏と岡田さんの両方と仲良くさせていただいていたんだけど、その二人が結婚したと聞いた時の衝撃たるや。

岡田 全ッ然、気づいてませんでしたよね。私とオットー氏が二人並んで立ってるところへやって来て、「なんか最近結婚したんだってね、おめでとう!……で、相手誰なの?」って訊いてきて。どんだけ鈍いのかと思いました。

津田 本当に意外だったんですよ。両方と付き合いが長いのに。岡田さんと僕が最初に会ったのは、2008年くらいでしたっけ?

岡田 そうですね。まだ会社員だった頃に、突然TwitterでDMがきたんですよ。小室哲哉さんについて語るイベントを主催するから登壇しないかって。

津田 当時小室さんから逮捕されたタイミングで、あまりにもマスメディアの報道が一面的に感じられたんですよね。そういう時だからこそ小室さんの音楽的な功績を振り返るイベントをやりたいと思って、小室さんについてよくツイートしている岡田さんに声をかけてみたんです。最初はめちゃくちゃ警戒されたけど(笑)。

岡田 そりゃしますよ……こちとらしがないネットユーザーですから「うわー、ブログ『音楽配信メモ』の中の人だ! この人より詳しく話せることなんか何もないよ!」って。その後、あれよあれよと『Twitter社会論』でブレイクなさって、『未来型サバイバル音楽論』という本を作ってお仕事もさせていただいて。でもまさか、私が書店で津田さんとトークイベントをやることになるとは……。

津田 不思議な巡り合わせでしたね。今回の『嫁へ行くつもりじゃなかった』は、cakesでの連載が書籍化した『ハジの多い人生』につづく2冊めですよね。マイナビニュースでの連載の書籍化ですが、そもそもどういった経緯で書くことになったんですか?

岡田 本当は「連載するつもりじゃなかった」なんですよ。お話をいただいたのは、各方面への結婚報告やらパーティーやらが一段落ついて、「これでやっと平常モードに戻れる!」と思っていたときで。でも、企画を持って来た若い編集者が、開口一番に「実は私も高野寛さんのファンなんです!」と言ったんです。

津田 岡田さん、高野さんの大ファンですもんね……。

岡田 気がついたら会って数分で「やります」と答えていました(笑)。マイナビニュースというのは他にも婚活や恋愛ものの連載が多くて、私も、雨宮まみさんの「ずっと独身でいるつもり?」を愛読していました。「雨宮さんのあの連載と同じ媒体で書かせていただける!」と喜び勇んで、「ずっと新婚でいるつもり?」というオマージュから始めたんですが、心無い人々に「未婚vs既婚」みたいに騒がれて、いきなり大炎上しましたね……今ではいい思い出です……。

婚活本じゃない!

津田 連載が書籍化したということで、注目ポイントは表紙なのかなと思うんですが、花嫁が振り返っているイラストは、岡田さんのリクエストで決まったんですか?

岡田 これは装丁を担当してくださったデザイナーさんの提案ですね。イラストを描いてくださったのは、私の大好きな漫画家である田中相さんです。私、田中さんの『千年万年りんごの子』という作品が大好きで、素敵なメガネ男子のお婿さんが出てくるんですよね。田中さんにお願いするなら是非ああいう夫を描いてほしいと思ってたんですが、「嫁のみで」というデザイナーさんの案が採用されて幻と消えました。

津田 表紙のこの人、驚いた表情で振り返っていますけど、これって意味深じゃないですか?

岡田 そうですか?

津田 「振り返ったら旦那に逃げられてた!」みたいな(笑)。僕、もしかしたら「嫁に行ったと言っているけど、全部脳内設定」っていう意図の表紙なのかなとすら……。

岡田 たしかに連載時から「この話、最後は夢オチなんじゃないか」ってずっと言われ続けていましたね……。「岡田がオットー氏みたいなデキすぎた夫と結婚できるわけがない!」とか。この表情は、「まさか嫁へ行くとは、私もびっくりです」という意味です。すごくかわいい絵に仕上がったんですが、おかげでこの本、書店で婚活コーナーに置かれていることが多いんですよ。『絶対に愛される女になるための100のヒント』とか『私の婚活、こうして成功しました!』みたいな本の間に、この子がこのびっくり顔で置かれているの、結構シュールですね。この本を読んでも結婚できないよ!

津田 いいキュレーションがされてますね(笑)。結婚の理想と現実をちゃんと見せよう、みたいな。あとは、こんな小難しい文章しか書いていないような女性でも、こんな出会いがあるかもしれない、という希望の書になるのかも。とはいえ、書店員さんにとって、ちょっと宣伝文句が書きにくい本ではありますよね。

岡田 そうですね。まぁ、釣りタイトルっぽいところはあります。

津田 ちなみに岡田さんはお相手を「オットー氏」と呼ばれていますが、オットー氏は、人前で岡田さんのことをなんて呼んでいるんですか? いろいろあるじゃないですか、「女房」とか「家内」とか。

岡田 「妻」ですね。私もふだんは「夫」と呼んでいます。

津田 だったら、「妻になるつもりじゃなかった」じゃだめなんですか?

岡田 実はこのタイトル、アーサー・ランサムの「海に出るつもりじゃなかった」と、フリッパーズ・ギターの「海へ行くつもりじゃなかった」にかけてるんですよ……。

津田 あ、そうなんだ!

岡田 「行く」という言葉ありきの「嫁」なんですが、それも通じにくくて、連載中にもままならないなあと思ったりはしました。

他のフラグは、ずっと前から折れていた

津田 自分が結婚したいな、って一番最初に思ったのはいつぐらいの話なんですか?

岡田 これは『嫁つも』でも書きましたが、7歳のときですね。家族で呼ばれた会食の席で、いきなりプロポーズされたんです。もちろんプロポーズをしてきた大人のほうは余興というか、遊びとしてやってたんですけど、子どもながらに真に受けてしまって。それ以来「結婚」ということはずっと頭の中にありました。ただ同時に、「私はずっと結婚しないかもしれない」というのも頭にあって。実際、自分が歩んでいく道っていうのは、いわゆる花嫁修業的な道からどんどん外れていきましたしね……。

津田 それは行った大学が慶應SFCだったせいですか(笑)。

岡田 いや、まわりで立派なお嫁さんになっている人はたくさんいるので、学校のせいにはできないです(笑)。

津田 じゃあどうして、「自分は結婚しないかも」って思ってたんですか?

岡田 そうですね……。こういう話をすると身も蓋もないかもしれないんですが、「結婚したいな」って考えるときって、結婚することにメリットが感じられるときだと思うんですよ。つまり、「この人と結婚したらこういう素敵なことが待っているに違いない」っていう夢を見ているとき。私は、一人でもけっこう楽しくやっていけるなって思えてしまっていたんですよね。

津田 ちなみに、オットーさんと出会う前に結婚までいきかけたことって、何度かあるんですか?

岡田 うーん、実際そうでもなかったです。殿方とお別れした直後にその話を周りの人にするときは、「いっときは結婚まで行きかけたんだけどね……」なんて話すこともありましたけど、いざ今、結婚してみると、あんなの全然結婚までいける恋愛じゃなかったなって思います。

津田 結婚までに至るハードルが想像よりもっと高いと気づいたっていうこと?

岡田 いや、具体化するよりずっと手前のところで「私はこの人と結婚するんだ!」って勝手に思い込んでいて、それ故にうまくいかない、みたいなことが多かったんだなと。独身のとき想像していた「結婚」と、実際の「結婚」は、ずいぶんズレていましたね。

津田 なるほど。ちなみに、お別れするときって、自分から言うのと言われるのと、どっちが多かったんですか?

岡田 言われるほうが多かったんじゃないですかね……自然消滅みたいな感じで。

津田 それは岡田さんにとって仕事が大事だったからでは。

岡田 いや、決してそういうわけじゃないんですけど……。「仕事と俺とどっちが大事なんだ」とはよく言われますね。あれ、なんて答えるのが正解なんでしたっけ? 「そんなこと言わせてゴメンな」?

津田 言う側が男だったらね(笑)。でもそれだって正解じゃない気がしますけど。

岡田 紆余曲折はあるんですけど、最終的にオットー氏以外の人と結婚する選択肢は私には全くなかったんだなと思いました。それぞれの男性と付き合っているときは可能性があると思っていたんですが、そんなフラグは立つ前からバキバキに折れていたんだなっていうことが、いざ結婚してみてわかりましたよ!

次回「【中編】交際0日婚は、デニーズ東銀座店の前で始まった」は11月5日(水)更新。


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嫁へ行くつもりじゃなかった
嫁へ行くつもりじゃなかった

この連載について

嫁に行くつもりじゃなかったけど—岡田育×津田大介対談

津田大介 /岡田育

編集者であり文筆家の岡田育さんが、自身の結婚体験について赤裸々に語った『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)。単行本発売を記念して、三省堂書店神保町本店でジャーナリストの津田大介さんとのトークイベントが行われました。cakesでは...もっと読む

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コメント

nijuusannmiri 書店で見かけると、「こう並べるのかー」と思うことは確かにある。 3年以上前 replyretweetfavorite

kabothomas アタシは離婚するつもりじゃなかったけど。面白そう。→ 3年以上前 replyretweetfavorite

xev_ra 表紙も△目にすればよかったのに。これはこれで売れそうだけど 3年以上前 replyretweetfavorite