小説化には、抵抗があった
—— まず『サイハテ』の小説を執筆することになったきっかけを教えてください。
3年くらい前に編集担当から打診をいただいたんです。ただ、その当時は『週刊アスキー』で連載していて忙しいというのを理由にして「小説を書くのはちょっと……」とのらりくらりとかわしていました。
その時は『サイハテ』という楽曲をノベル化することに抵抗があったんですよ。自分が小説という形で公式に発表してしまうことで、これまで『サイハテ』という楽曲が好きで、自分なりに解釈をしていた人たちの想像の幅を狭めてしまうんじゃないかと。「これが正解の形です」と楽曲を作った本人から出されるものに抵抗がある人も多くいると思っていて。そういう理由で断っていました。
特に、『サイハテ』は、発表当時すごく二次創作が多い作品だったんです。色々な解釈で、みんなが二次創作をしてくれて、それがすごく面白かったので、その解釈の幅は狭めたくないという気持ちがありました。
—— なるほど。そこから執筆しようと思ったのはなぜでしょうか?
断ってはいたのですが、小説を出しませんかという話をいただいてから、「『サイハテ』という楽曲で何か物語を作るとしたら、どんな感じになるかな?」と、どうしても想像するようになってしまったんです。
そこで、こういった構造で物語を書けば面白いものができるんじゃないかというアイディアが浮かんでしまって。思いついてしまったら、ものを作る人間、クリエイターとしては、やっぱり表現してみたくなってしまうものなんですよ。
それで、編集担当にアイディアを話してみたら、「いいですね。これなら面白くなりますよ! 書いてみましょうよ!」と言われて、その気になってしまったという(笑)。
—— これまで小説を書いてみたことはあったのでしょうか?
いえ、まったくありませんでした。これまで音楽や映像、デザインなどをやってきましたが、「小説を書こう!」と思うきっかけがなかったんです。
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