麺工場でのベテラン男性の神業
とある、そば・うどんチェーン店の麺工場を取材させてもらった時のこと。1食分にパッキングされた麺がベルトコンベアを流れてくる。いかにもベテランの男性が袋を持ち上げてはラインに戻している。何十袋かに1つ、別の箱に弾く。わずかな重さの違いで不良品を探し当てて仕分けているという。重さが異なるものは一部の麺が潰れていたり、切れていたりするそう。このように、いくら効率的に同じものを量産しようとしても、基準に至らないものは必ず一定数生まれてくる。「均質」は、「均質でないもの」を慎重に間引くことで保たれる。
J-POPベルトコンベアには「善意」が流れている
(曖昧な定義だが)気の利いた音楽やマニアックな音楽ばかり聴く人は、「流行りのJ-POPなんてどうでもいい」と仰る。こちらはその土地ならではの名水を使った手打ちそばをすすっているので、立ち食いそばのクオリティなんてどうでもいいんですと言う。今、J-POPをベルトコンベアに流すと、そこから立ちこめてくる香りは押し並べて「善意」だ。代わり映えしないこれらの善意を浴びて素直に前を向ける人って、すでに前を向いている人じゃないか、ならば聴かずにそのまま前を向けばいいじゃんかと疑いたくなるほど、シンプルな善意に溢れている。しかし、機械をいくら精密に作っても、一食分の麺のパッキングを誤るのと同じく、善意も同じように見えて、少しの誤謬を犯すもの。均質のようでいて、均質ではないのだ。
オマエたちの未来は、明るく照らされているんだから
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。