後編】映画に主題歌は必要か?

本日10月18日より全国公開中の「まほろ駅前狂騒曲」で復活した監督・大森立嗣さんと音楽・岸田繁さん(くるり)のコンビ。対談後編は「そもそも映画の音楽はどうやって作られるのか?」という素朴な疑問に答えてもらうところからスタート。真に大人が楽しめるエンタテインメント映画のために、二人のプロフェッショナルはどう働いたのか?

音楽で台詞に方向性を付ける

 大森さんは今回、岸田さんにどんなオーダーの仕方をされたのですか?

大森立嗣(以下、大森) 俺、ほとんど何も言ってないっすよ。前に一度やってるし。ただ岸田くんの方から映画を通して統一感を出すように持っていこうみたいな提案をしてくれて、そうですねって言って。ただ音楽を入れるところだけは全部指示するんです。それでたぶんいろんなメッセージは伝わるので、内容のことはほとんど言わないですね。

岸田繁(以下、岸田) こんなに的確に指示していただける監督は、僕、初めてだったんです。何コマ目の何秒から何秒までっていうしっかりした指定があって。だから作業するのはすごく、簡単。いや簡単っていうのとは少し違いますけど、シンプルで、そのシーンを観て頭の中で流れた音楽を形にするという。

 そのシーンに必要な音というのはすぐに出てくるものなのでしょうか?

岸田 話の筋や雰囲気を掴むためにまずは1回観るんです。そこで思いついたもんとか監督の指示はメモしておく。でもそれはあくまで全体の雰囲気をつかむためにスケッチするっていう感じで。あとはもう順を追って監督が指示されてる場所を観ていって、頭の中で流れたものに細工してという。セリフと音が被ってたりするから、そういう時はセリフの入ってるところの音を少なくするとかですかね。

 なるほど。あくまで脇役に徹するということですね。

岸田 でも今回は意図的に、役者さんのおもしろい台詞とか間にあえて音を入れるっていうこともやったんです。役者さんの声のトーンとか高さに対して、全部和声になるようにしていって。その台詞が悲しく響くのか楽しく響くのか、そういうのを音楽で方向付けるというか。鈍くさくしゃべってるように聞こえるリズムの入れ方とか、逆にすごい急いているような感じに聞こえるリズムとか、そういうテクニカルなところはすごいこだわりました。どうせやるんだったらおもしろい音にしようと考えて、すごいやり過ぎたところもあった。

大森 ぶっ飛んでるところだよね。

岸田 普段から人がしゃべっている横で、勝手にアコギ弾くの好きなんですよね。普通にガス代の話とかしてるのに、すごいドラマチックにアコギを弾いたりとか。

大森 勝手に弾いてるんだ(笑)。

岸田 そういうのが好きなんです。しょうもないです(笑)。

 それはある意味ストーリーの流れを岸田さんが握ってしまうことでもありますよね。監督からは悲しい曲にしてほしいとか、そういうオーダーはないのですよね。

大森 してないですね。

 それは結構スリリングな作業のようにも思うのですが。

岸田 いや監督の意図を汲めない場所っていうのも観た中でほとんどなかったんで。でも、自分が勘違いしてる場所が二箇所くらいあったから、そういうとこは自分でもどうだろなって思ってたら、やっぱり違うのが聞きたいっていう感じで戻ってきたっていうのはありました。

 そうなんですね。

岸田 喜怒哀楽がはっきりしてる部分というか、泣かせる部分っていうのは、直接的っていうとあれですけど、ちゃんとそういう作り方をする。それとアホなシーンに中途半端な音楽つけたらほんまダメなんですよ。だからアホなシーンには、ほんまにこう出来るだけアホな音をつけるというのをストレートにやるという。たとえば、『時計仕掛けのオレンジ』とか見てたらアホなシーンにベートーベンかかってたりするんですよね。

大森 はは、確かにね。

岸田 ただそれだけじゃなくて自分としては、自分が時に実験をすることも含めて、ちゃんとお話とか、監督の意図の一部でありたいなと思っています。たぶんそうじゃなかったら、いわゆる職人さんに頼んでるだろうし。

本当は映画主題歌いらない派

 主題歌の『There is(always light)』はどのタイミングで出来上がったんでしょうか。


くるり『There is(always light)』

岸田 ぶっちゃけ、全然この話をいただく前です。

 あらかじめ出来ていたんですね。

岸田 話がきたとき、これしかないでしょって思ったんです。

 監督は主題歌を聞いてどう思われましたか?

大森 バッチリだなっと思ったんで、即答で、いいんじゃないですかって感じでした。

 そうですね、ラストシーンのイメージと重なって、すごくいいですよね。

岸田 実を言うと、僕、本当は映画主題歌いらない派なんで。

 あ、そうなんですか。

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大人の映画の相棒は—「まほろ駅前狂騒曲」公開記念インタビュー

岸田繁 /大森立嗣

「まほろ駅前多田便利軒」から3年半。多田(瑛太)と行天(松田龍平)、クールかつ間抜けな二人組がついにスクリーンに帰ってくる。そしてそれは監督・大森立嗣さんと音楽・岸田繁さん(くるり)のコンビが帰ってくることも意味するのだった。今作も「...もっと読む

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コメント

be_Qrl___wish 読んだらますます観るの楽しみになった! 早く観たいよー 約4年前 replyretweetfavorite

momonga11 岸田くんの音楽に気を取られてストーリーが入ってこないと思う。二回以上観なければ。「便利軒」も劇場で二度観た 約4年前 replyretweetfavorite

kisanuki26 大作と小規模の間。舞台でもそうなのかなーとか役者の声のトーンに対して和音になる音楽作りとか面白い。 約4年前 replyretweetfavorite

kinapen 最後の、監督の日本映画に対する見解が印象的。今回プロモ熱心なのもここに集約されるんだろうなぁ。 約4年前 replyretweetfavorite