「五〇個のお手伝い」 完成形
うちの社員、FREEexのメンバーにトモカズというヤツがいます。彼は「シンセサイザー業界」で働いていました。シンセサイザーのプログラミングをやっていたんですよ。YMOに代表されるニューウェーブ=テクノポップ系の音楽が一世を風靡した時代に、その業界に飛び込んだそうです。
そのころは、シンセで音楽のプログラミングができるというのは特殊な技能でした。だから、収入もちゃんとあった。
ところがその後、シンセは高機能になるのに反して価格がしだいに安くなっていきます。それまで数千万円もしたシンセが数十万円になって、しまいには数万円ほどになってしまいました。それにともない、シンセをプログラミングする技能もコモディティ化していったのです。
それでも、トモカズ君が勤めていた会社はシンセサイザー系の音楽を手広く手がけていたので、いちおうは仕事を取ってくるわけです。
トモカズ君の仕事はシンセのプログラミング……のはずなのですが、その関連の仕事、たとえばシンセをセッティングする仕事、シンセをコンサート会場へ運ぶ仕事などもこなすようになりました。そのうちシンセだけでなく、あらゆる楽器を運ぶ仕事、現場で配線をする仕事、レコーディング作業をするときに音響設備をハンダづけする仕事なんかも請け負うようになります。ついには、そのハンダづけをするためのコードをちょうどいい長さに切る仕事までやったそうです。
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