第38回】大森靖子と為末大、炎上させる必要があったのか?

今週はミュージシャンの大森靖子と、スポーツコメンテーターの為末大に起きた、ふたつの炎上事件を考察します。まずはある対談記事での発言が火種になって、ネット上で批判が起きた大森靖子。先日雑誌で取材したばかりだったおぐらりゅうじさんは、その批判に対してお怒りの様子です。一体何に怒っているのか。そして為末大は、ヒップホップについての発言が炎上。この炎上自体がヒップホップという音楽のために良くないと速水さんは言います。

9月第5週、10月第1週のおもな出来事
・テラスハウス 2年の歴史に幕 意味深なラスト(9月29日)
・卓球日本女子団体 アジア大会で48年ぶりの決勝進出(9月30日)
・子供達がアニメの影響で「何でも妖怪のせい」に賛否 (9月30日)
・狩野英孝ブログで離婚を報告「妻に大変苦労かけた」(10月1日)
・「ビッグダディ」の自宅兼整骨院が全焼(10月5日)

サブカル女子への憎悪?

速水健朗(以下、速水) 先週のサブカル問題に続いて、今週もまたサブカル問題だね。大森靖子と為末大の炎上について。

おぐらりゅうじ(以下、おぐら) はぁ……またですか。ちょうど昨日、僕が『テレビブロス』で連載を担当しているラーメンズの片桐仁さんと一緒に取材に行って、そこでも話題になったんですよ。最近とあるイベントの出演オファーがきたらしく、ふとマネージャーさんが「どうして片桐に?」と聞いたところ、「今回のイベントはサブカル色を前面に押し出そうと思いまして」と。

速水 この2014年にサブカルを全面に押し出すイベントって、すごいね。

おぐら 片桐さんも「逆に新鮮だったよ。それこそ90年代の後半から2000年代のはじめ頃は、ま~よく言われてたけどね」と言ってました。もはやこれはサブカルのリバイバルなんだと、僕はあえて盲信してます。この片桐さんが語るサブカル話、もっと詳しく紹介したいところですが、詳細は10月22日(水)発売の『テレビブロス』に掲載いたしますので、どうぞこちらをご参照ください。ヴィレッジヴァンガードや『クイック・ジャパン』などの単語も登場します。

速水 さらっと宣伝した(笑)。じゃあ、そんな2014年のサブカル最前線にいる、サブカル編集者のおぐら君は、大森靖子の炎上の件、どう見たの?

おぐら 1行で2回もサブカル言わなくていいですよ! まぁでも、そう言われることは誇りに思っていますし、個人的なサブカルと雑誌と編集に関する話は、いろいろ思うところもあるので、いつか機会があればじっくり話したいです。で、炎上の件ですが、大森さんが炎上するのは日常茶飯事なので、そこはあまり問題ではなくて。大森さん自身、『ミュージック・マガジン』10月号のインタビューで、ネット上の評判について「情報ってこんなに1コもあってないんだってことが確認できたので、だったらこれを利用しないと、やられっぱなしは嫌だなと思って」と言ってますし、後日ブログでは「文脈知らねー奴がとりあえず掻い摘んで意識高いぶれちゃう楽しいインターネットですね。そんなに暇で大森靖子の記号利用して言いたいこともそんなにあるんなら、あんたもなんかやればいいのに」*1と。ある意味やる気まんまんです。
*1 洗脳 - 「あまい」大森靖子ブログ

速水 改めて背景を説明すると、炎上は、ナタリーでの銀杏BOYSの峯田和伸との対談の中で、彼女がフェミニズム批判をしたということなんだけど*2
*2 大森靖子×峯田和伸(銀杏BOYZ)対談

おぐら この対談はものすごい意義のある企画で、ナタリーは本当に素晴らしい仕事をしました。読めばその意味が分かるので、ちょっとでも引っかかる人にはぜひ読んでほしい。そういう画期的な記事だっただけに、今回は本来の意義とはかけ離れた炎上だったので、ちょっと驚きました。

速水 ナタリーに関しては、8月末のKDDIへのバイアウトの話題は、ここでし損なってたけど、2006年にサービスを立ち上げる頃からの話が一冊の本にまとまっておすすめね。僕も立ち上げの頃とか、近くにいてタクヤ(大山卓也)さんとか、津田(大介)さんとかがナタリーを立ち上げる前夜に一緒に麻雀やったの覚えてる。


『ナタリーってこうなってたのか』大山卓也、双葉社

おぐら 立ち上げに誘われてたんですか?

速水 どうだろう、誘われはしなかったのかも……。麻雀で負ける形でタクヤさんにはご祝儀をたくさん払ったような記憶はあるけど(笑)。あ、炎上の話ね。

おぐら はい。表面的には「田嶋陽子」の名前を出したあと、「女性が社会運動すればするほど女性が不自由になっていくんですよ。だからあれとっととやめてほしくて」「だってもともと自由なんだから。社会と関係なく自由でいればいい」の部分が切り取られて問題になりました。固有名詞として「田嶋陽子」「女性」「社会」「運動」「自由」が出た時点で着火、「とっととやめてほしくて」「社会と関係なく自由」が火に油を注いだっていう感じですね。

速水 それで「反フェミニズムだ」「運動も歴史も知らないくせに」「社会と関係ないとは何事だ」といった批判が続出した。でも、彼女は単純に「フェミニズムいらない」みたいなことは言ってないよね。ちょっと文脈が捉えにくいだけで。

おぐら もう炎上には文脈とか関係ないんですよね。だって該当の対談はネット上に無料でアップされている記事なので、ネットで炎上している以上、加担している人の全員が読める環境にあるはず。それでも発言の一部だけを物的証拠とばかりに引用して叩きまくる。

速水 いまどきの炎上は、文脈を理解できない人が言葉尻だけで反応するという現象のことになっている。

おぐら 発言の一部を切り取るのは、テレビのニュースやワイドショーなんかでは昔からやってる手法ですけど、テレビの場合は元になった映像や前後の発言に視聴者が簡単にアクセスできるわけではないので、それとは本質的に違います。文脈を「知らない」のではなく、「理解しない」といったほうが正しい。

速水 この対談で彼女は、取材なんかで「今は女子が元気ですよね」とよく言われることに違和感があって、「全然そんなことない」と言ったうえで、アイドルブームのような昨今の状況は、別に女の子が元気だからそうなってるんじゃなく、それを仕掛けているビジネスが活況ということであり、そのビジネスを動かしているのは男性だって言っている。それが彼女の主張だとすると、むしろ彼女自身がフェミニズム視点でものを言っていることになるよね。

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おぐらりゅうじ /速水健朗

政治、経済、文化、食など、さまざまジャンルを独特な視線で切り取る速水健朗さんと、『TVブロス』編集部員としてとがった企画を打ち出し、テレビの放送作家としても活躍するおぐらりゅうじさん。この気鋭のふたりのライターが、世の中のニュースを好...もっと読む

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コメント

764_7110 大森靖子と為末大、炎上させる必要があったのか?| 約2年前 replyretweetfavorite

YuhkaUno 批判tweetの中に「サブカル女子ダセー」という文言があったことで、「結局サブカルが批判されてるだけなんだ!」ってなったんだろうか。結果的に、この記事の内容が、“文脈を理解できない人が言葉尻だけで反応する”ことになっているような…/http://t.co/E5DYbvEUpW 3年弱前 replyretweetfavorite

YuhkaUno この記事の人たちにとっては、普段から自分の観測範囲外だったからわからなかったんだろうけど、あの件で大森靖子氏の発言に反応してたのは、当の「女性の社会活動家」の人も多くてね。田嶋陽子氏は枝葉じゃなくてむしろメインだったよ。/https://t.co/HALm3A82HF 3年弱前 replyretweetfavorite

YuhkaUno 私の観測範囲では、私も含めて、そもそも大森靖子という人をよく知らない人も多かった印象なんだけど…大森靖子氏がサブカル枠だったって、今回の件で初めて知った。 3年弱前 replyretweetfavorite