服用前の注意「絶対にマネをしないで下さい」
おもしろ毒舌芸人を二人呼ぶと、ひとりの時よりもおもしろくなるでしょうか?
毒と毒がトンデモない化学反応を起こして、抱腹絶倒のオモシロ空間が広がるかもしれませんが、ヘタをすると、ひとりの時よりもツマラなくなるかもしれません。
今回は、そんなお話です。
毒にも薬にもなる
漢方薬の中には、
風上に立った忍者はウズの粉を撒き、風下に立った敵を倒します。忍者同士の戦いでは、風下に立ったら負けなのです。僕が子供の頃は、テレビで「カムイ」のアニメを放送していたので、この忍者の基本的な心得は常識でした。
事実、トリカブトの毒は非常に強力で、体重1kg当たりの半数致死量は5mg程度(資料によっては1.5mgというものもある)といわれており、これはトリカブトの毒が青酸カリと同程度の強力な毒であることを示します。
にもかかわらず、トリカブトは現在でも多用されている生薬です。こんなに危険なものを使っても大丈夫なのかと不安になるかもしれませんが、ぜんぜん問題ないのです。その理由は、記事の最後にあるコラムをご覧下さい。
トリカブト殺人事件
1986年5月、石垣島のホテルで、2月に結婚したばかりの女性が死亡しました。死因は急性心筋梗塞。33歳という若さでした。
ところが、その女性には1億8千万円以上の生命保険がかけられていました。保険金の受取人は夫でした。しかもこの夫、結婚は3回目で、以前の奥さんはふたりとも心臓の病気で亡くなっていました。
これだけ揃えば、いかにも保険金目当ての殺人という感じがします。
死亡した女性の友達も保険金殺人に違いないと考え、保険会社などに働きかけました。警察も動き出し、死因を探るための再検査が行われると、案の定、保存されていた女性の血液からトリカブトの毒が検出されたのです。
それだけではありません。夫にトリカブトを販売したという証人まで現れました。トリカブトの花は観賞に耐える美しいものなので、売っているんですね。ちなみに花言葉は、美しい輝き、厭世家、人嫌い、復讐など、たくさんあります。
猛毒のトリカブトの花
夫が保険金目当てで奥さんにトリカブトを飲ませて殺した。
これで決まりだと思われましたが、大きな謎が残りました。
夫は奥さんが死亡するおよそ2時間前に、奥さんと別行動になり、その後のアリバイがありました。
当時の状況から考えると、夫が奥さんに毒を飲ませたとすると、奥さんと別行動になる前、つまり死亡の2時間以上前ということになります。ところがトリカブトの毒には即効性があるので、毒を飲ませた後に2時間も経ってから死亡することはありえないのです。
長時間経ってから溶けるカプセルを使った?
それも違いました。カプセルは二重にして使っても、せいぜい数十分しかもたないのです。
状況証拠はギルティーを宣告していますが、物理的に殺人は不可能。
果たして夫は無罪なのでしょうか?
フグはブシを相悪む?
中国の古い書物に「亦悪烏頭、附子之属(またフグは、ウズ、ブシの仲間を悪む)」という記録があります。
悪むは「にくむ」と読む漢方用語です。にくむって、何でしょう?