うちの子も真央ちゃんみたいに
ショートプログラムでの失敗をフリーの演技で巻き返した浅田真央に感動して、娘をフィギュアスケートの教室へ通わせる親が急増したというニュースを思い出す。「急増」というより「急造」のニュースという気もしたが、あの手の親の即断は一体どういう心持ちによるものなのだろうか。試しに周囲に問いかけ「子どもができれば分かるよ」という返事をもらってはいるものの、子どもができていないから分からないままなのである。どこからともなく放たれる「30歳になればラクになるよ」と同じようなもので、これは回答ではない。もしも「うちの子も真央ちゃんみたいに」という純朴さがスケートリンク内に満ち溢れているのだとしたら、リンク外からは「真央ちゃんみたいにはなれないよ」と純朴に反応してみるしかない。どちらも純朴な気持ちではあるが、拮抗させてみると、こちらの純朴さはなんて建設的なんだろうと思う。
卒業文集と現在をリンクさせちゃう問題
卒業文集に本田圭佑が「ぼくは大人になったら、世界一のサッカー選手になりたいと言うよりなる。レギュラーになって10番で活躍します」と書き、錦織圭が「夢は世界チャンピオンになること。夢に向かって一歩一歩がんばっていく」と書いていた事実がみんな大好きだが、親から「同い年の子がこんなにがんばっているのに、どうしてあんたは」とテレビに映る高校野球児をダシに素行を突つかれ、4時から始まる「あぶない刑事」の再放送まで2階の部屋に閉じこもることしかできなかった身としては、卒業文集の夢を実現したことを褒め讃える働きかけがとにかく苦手。フィギュア教室に申込が殺到するのと、卒業文集まで遡りたがるのは同じライン上にある。つまり、「この頃から目指していた」を作り上げたいから、まずは「この頃から目指していた」の具体例を欲するのである。
「スポンサー各社に感謝します」とだけ言える快活さ
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