HOUXO QUE(美術家)→松村宗亮(茶道家)Vol.2 いま茶の湯を嗜む魅力は何ですか?

今回インタビュアーを務めてくれるのは、現代における絵画表現の可能性を追求する美術家として、国内外で精力的な活動を展開しているHOUXO QUEさん。そんなQUEさんがインタビューするのは、横浜・関内にあるマンションの一室に茶室を設け、新しい「茶の湯」の提案を目指すSHUHALLYの代表である裏千家 茶道家・松村宗亮さん。偉大な先人たちが培ってきた伝統文化を尊重しながら、日本独自の美意識を更新すべく精力的な取り組みを行う松村さんに、 QUEさんが聞いてみたいこととは?

どうやって茶室をつくったのですか?

Q.一般的な茶室というのは平屋建ての日本家屋に併設されている印象が強いのですが、ここは集合住宅の中にありますよね。

松村:このビルは、家業の不動産事業として建てられたのですが、ちょうどタイミングが良かったこともあり、マンションになる予定だった部屋の一部を急遽茶室にすることにしたんです。そうした前提条件の下で茶室をつくることになったのですが、友人の建築家が独立したタイミングだったので、彼にお願いをすることにして、日本中のお茶室を一年ほどかけて一緒に見て回り、さまざまな茶室の文献も調べていきました。茶道には「写し」という文化があり、既存の有名な空間をコピーすることが多いのですが、いまお話ししているこの空間も「咄々斎」という裏千家の有名な稽古部屋の写しになっています。その中にガラスや照明などオリジナルの要素を加えたり、他のさまざまな茶室の要素をサンプリングしながらつくっていったのがこの空間なんです。


SHUHALLYの稽古場。 Photo: Sadahisa Yokouchi

Q.集合住宅という都市的な空間の中に空中庭園のようにお茶室があるという状況が、まさにいまという時代を象徴しているように感じます。

松村:茶の湯の言葉に「市中の山居」というものがあるんですね。お茶というのはかつて、京都や堺などの大都会で盛んだったのですが、こうした場所では、武士や商人というヒエラルキーや日常の生活、価値観からトリップできるものとしてお茶が楽しまれていたところがありました。だから、当時は都会の真ん中に、あえて山居のような佇まいの空間をつくるということが文化としてあったんですね。この茶室は、横浜の関内という場所にあって、横浜スタジアムの歓声などが聞こえてきますし、周りはラブホテルや葬儀屋などに囲まれているのですが、こうした不思議な空間というのが現代における「市中の山居」に近いのかなと思っています。

Q.現代での実践的な形ということですね。江戸時代は山に行くことが困難だったから市中に茶室を設けたのだと思いますが、いまは逆に茶室に行くことが困難だから集合住宅の中にそれがつくられているということですよね。

松村:そうですね。この奥にある「文彩庵」という四畳半の茶室も裏千家の「又隠」という茶室の写しなのですが、こちらは壁がステンレスになっています。マンションの中に和室があるということ自体がそもそもフィクションと言えるのに、そこに土壁などを使ってしまうと、さらに高度な嘘が入ってしまうと感じたので、自分にとっても身近な金属やガラスを使うことにしたんです。また、僕自身ゴツゴツギラギラしたものが好きだというのもあったので、三十代半ばの男の色気が感じられるような、車のハマーのような茶室をつくりたいというなんとも軽薄なアイデアがベースにありました(笑)。その頃、LEDを内蔵した「光畳」というものがあることを偶然知り、それを使うことにしたのですが、「光る茶室」という個性がフックになり、多くの人に覚えて頂くことができました。


SHUHALLYの茶室「文彩庵」。 Photo: Sadahisa Yokouchi

いま茶の湯を嗜む理由は何ですか?

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