第37回】ヘイトスピーチをサブカルで倒せるのか

9月23日に日本全国で行われた嫌韓デモ。8月に国連人種差別撤廃委員会から勧告を受けていたのにも関わらず、その規模は拡大しています。なぜヘイトスピーチが広まってしまうのでしょうか。また、同時に規模が拡大しているのが、反ヘイトスピーチを標榜している「カウンター」と呼ばれる人たちの存在。彼らもまた攻撃的な発言で批判されることも少なくありません。カウンターをどう捉えればいいのか、サブカルチャーをヒントに考えます。

9月4週目の主なできごと
・少年ジャンプが雑誌と同時並行で電子配信開始(9月22日)
・エボラ出血熱による死者2881人に WHOが発表(9月23日)
・上原多香子の夫でET-KINGのTENN(35)死去(9月25日)
・競泳富田がアジア大会(韓国)で窃盗 被害者に謝罪(9月27日)
・長野と岐阜県境の御岳山が噴火、登山者約250人が取り残される(9月27日)

ヘイトスピーチは何と戦っているんだ

おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 8月に国連人種差別撤廃委員会が日本に対してヘイトスピーチの法規制を求める勧告を出しましたが*1、まさにその最中、翌9月23日に「全国一斉 日韓断交アクション2014」という大規模なデモが全国11カ所で大々的に行われました。
*1 ヘイトスピーチ:国連委の日本勧告「予想以上に厳しく」

速水健朗(以下、速水) 東京では六本木界隈でやってたみたいね。東浩紀さんがTumblerにレポートを載せている*2。在特会が六本木から古川橋までデモを行っているのを、警察が周りを固めて、そのさらに外に「カウンター」と呼ばれる大勢の在特会のデモをつぶそうとしている人たちがさらに囲んでデモについて行ってる。動画でも見たけど、カウンターの側も「死ねバカ」とか叫んでいて、ものすごくガラが悪い。
*2 在特会デモ&カウンター「観光」記

おぐら えぇ、僕も物騒すぎて驚きました。在特会が「叩きだせ」とか「ゴキブリども」とかっていう言葉を東京のド真ん中で大声で叫んでいる光景も、もはや右傾化とかネトウヨっていうレベルじゃ全然ないです。

速水 村上龍の『愛と幻想のファシズム』って、経済危機に陥った近未来の日本で若者に支持される若いカリスマを中心としたファシスト勢力が政党を作ってテロや謀略で力を伸ばしていくっていう話なのね。1980年代半ばの日本経済がイケイケだった時期に書かれた小説なんだけど、未来予測としてかなり当てている気がするよ。ただ、主人公のトウジというカリスマが、在特会のリーダーである桜井誠に当たるわけで、その現実のザンネンさといったらないんだけど。

おぐら 9月24日に発売された桜井誠の『大嫌韓時代』は、Amazonランキングの総合1位を取ったことも話題になりました。10月に入って『ドラゴンクエストX みちくさ冒険ガイドVol.4』に抜かれましたが。

速水 ドラクエがんばれ(笑)。話を戻すけど『愛と幻想〜』の中で、主人公はスキャンダルメディアを利用して権力を得ていくのね。これは、現代の日本にヒトラーが生まれたらどうなるかっていうシミュレーション小説でもあるんだけど、政治権力の正当性とメディアの重要性は、まさにナチス党がやったことを踏まえているの。それでいうと、在特会はネットというメディアを利用しているっていう見方が当然できるわけだけど、在特会のネットスキルって、いまいちパッとしないんだよね。公式サイトは左翼系市民運動のホームページにしか見えない。オウンドメディア戦略*3としては落第点。とはいえ、ネットの右傾化が一定の規模を確保しているのは確実だよね。かつての2ちゃんねるの全盛期とどれだけ右傾化レベルで変わったのかは、いまいちわからないけど。
*3 企業が消費者への情報発信のために自社で作るメディア。

おぐら ネットはネットでひどいですけどね。最近びっくりしたのは、韓国のアイドルグループが高速道路で事故に遭い、メンバーが亡くなったというニュースがヤフーに上がっていて、コメント欄を見たら罵詈雑言が溢れかえってました。

速水 Yahoo!のコメントはたしかに酷い。この対談も、Yahoo!ニュースに転載されてるみたいだけど、僕は見ないようにしてる。ちなみに、ネット戦略でいうと、カウンター側は特に基盤やリーダーを持たない組織みたい。攻殻機動隊的に言えば「個別の11人」みたいな。あと、今盛り上がっている香港のデモ*4でも、天安門事件の反省を踏まえているのか、リーダーがいないというのが特徴らしいね。
*4 数万人、香港中心部を占拠 行政長官選挙巡る抗議活動

おぐら デモは3.11以降、各地で盛んに行われていますが、それは戦うべき相手が政府や東電という権威であって、怒りの矛先や道理も明確です。でもヘイトスピーチの標的になっているのは在日韓国人という一般人。そこが根本的に違いますよね。

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おぐらりゅうじ /速水健朗

政治、経済、文化、食など、さまざまジャンルを独特な視線で切り取る速水健朗さんと、『TVブロス』編集部員としてとがった企画を打ち出し、テレビの放送作家としても活躍するおぐらりゅうじさん。この気鋭のふたりのライターが、世の中のニュースを好...もっと読む

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herfinalchapter 《動画でも見たけど、カウンターの側も「死ねバカ」とか叫んでいて、ものすごくガラが悪い。 》←こちらでは周回遅れのカウンター叩き。「賞味期限切れ」はおまえら: 約4年前 replyretweetfavorite

NishinoM もともと日本のテレビで政治が笑いのネタになったことはほとんどないんじゃないかな。 最近は笑いの分野で時事や政治をネタをにする芸人がめっきりいなくなって(中略)ここは間口が広い笑いの文脈に落とし込んだほうが有効だと。https://t.co/0oo69Uqg60 約4年前 replyretweetfavorite

pinkcrocs  無料のうちに! 約4年前 replyretweetfavorite

oyamakumao 「松っちゃんが片山さつきのモノマネを四万十川料理学校のコントみたいにやったら最高だね」 約4年前 replyretweetfavorite