今こそ小説の力を
—— 2000年代にデビューした作家の宿命があると思うんですね。90年代までと違って、日本が衰退期に入っていることを直視しなければならないことが一つ。もう一つは、東日本大震災・福島原発事故を、どうしても避けて通れないことですね。この二つは、作家にはかなりしんどいことだろうなと思います。改めて、震災と原発事故が、真山さんにとって何だったかをうかがいたいと思います。
真山 私は1995年の阪神大震災の時に神戸で被災しています。だから、震災のことをずっと小説にしたかった。どう書こうかと迷っている最中に、東日本大震災が起きて、しまったと思うのと同時に、今度こそ、前のめりで被災地の小説を書かなければならないと思った。だから、小説家としては、むしろ背中を押された感じがあります。
—— 3・11が起こった時、どう感じましたか?
真山 東日本大震災が起こった時は、正直呆然としました。とにかく原発を早く止めるべきだと思っていました。止める方法がわかっているのに、止まらなかった。これは大変なことが起きるだろうなと思いました。
阪神の震災もそうですけど、最初の本震では、人はあんまり死んでないんですよ。その後の二次災害や、火事で死んでいる。東日本もそうで、犠牲者の大半は、津波で亡くなっていますよね。
—— 確かに、その通りです。
真山 やっぱり人間が、大自然に対して驕っているから、こういう事態が起きたんだろうなって思いましたね、震災直後に、石原慎太郎都知事(当時)が「日本人のアイデンティティーは我欲」「やっぱり天罰」と発言して物議を醸しましたが、まさに先進国、あるいは人類全体が我欲で突っ走ってきたから、自然が警鐘を鳴らしたのかなと思いましたね。95年にも鳴らされた警鐘が生きていない。人間は無力だなと本当に思います。
ただ、小説家としては、これで書けなくなるとは1秒も思いませんでした。今こそ小説の力でしょ、って思いましたね。
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