もうひとりの鷲津政彦
—— 中国の原子力発電建設の現場を舞台とした『ベイジン』の連載が始まった年に、NHKで『ハゲタカ』のドラマが放送されます。これがベストセラーのきっかけになるわけですが、今振り返って、ドラマについてはどう感じていますか?
真山 デビュー作があれだけのすばらしいドラマになったのは、幸せなことです。やっぱりNHKはすごいなと思うのは、どこの地方へ行っても、取材相手の3人に1人は「ドラマを見た」って言うんです。これはやっぱり大きい。
もちろん本もものすごく売れましたし、映画にもなった。そのおかげで、20代後半から30代の若い層に、熱狂的真山ファンがいるんですね。この10年間の運はすべて凝縮されているくらい、ドラマ化は幸せなことだったと思います。
—— 一方で、ドラマの『ハゲタカ』と小説の『ハゲタカ』って、だいぶ違いますよね。
真山 全然違いますね(笑)。
—— 原作者としてはどのように感じましたか?
真山 最初にNHKからお話が来た時に、原作との違いにどれぐらいこだわりますかって聞かれたんです。こちらからお願いすることは一点だけ、ハゲタカのせいで日本がおかしくなったというのだけはやめてくれと言いました。
この小説は、言い訳ばっかりしている日本人がハゲタカにむしり取られる、原因も結果も日本人の自業自得だという物語なので、そこをドラマとして作ってくれるのであれば、もう鷲津が女でも構わないし、新しい登場人物を入れても構わないと言いました。
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