もしも僕らが家を買ったら
家は薔薇と蜜蜂でいっぱいになるだろう
ちいさな街に午後がきたら
教会から祈りの鐘が鳴り響くだろう
午後の窓辺に光が射せば
宝石みたいに透き通る葡萄のふさは
うつろう影の中
陽を浴びて眠っているようだろう
その場所で
僕はどんなに君を愛するだろう
そして僕の心のすべてを
君にあげよう
皮肉好きな性格も小さな誇りも
ささやかな詩もすべて
もしも僕らが草原に住んだら
金色の蜜蜂が飛びまわるあの場所や
涼しげな小川のほとり、柔らかな草の影で
僕らはふざけ、笑いながらくちづけするだろう
ふたりに聞こえるものは太陽の熱だけ
君の耳にクルミの木が影を落とし
それから僕たちは笑うのをやめて
口をひとつにするだろう
言葉では言い尽くせない
ふたりの思いを語るために
そして僕は見つける
君のくちびるに
宝石のような葡萄の実と
赤い薔薇と蜂蜜の甘さを
「もしも僕らが家を買ったら」
フランシス・ジャム(1868 - 1938)
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