新訳 世界恋愛詩集

もしも僕らが家を買ったら」フランシス・ジャム

「図書館や本屋の片隅で埃をかぶっている詩集たち。その中に、ちいさな宝石を見つけ出すように」――「詩人天気予報」などで話題の詩人・菅原敏さんが、古今東西の詩人の作品に新訳という名のオマージュを捧げる連載。気鋭の現代美術家・久保田沙耶さんのアートワークとともにお楽しみください。
第三回は19世紀末フランスの<自然と愛の詩人>フランシス・ジャム。自然の中で過ごす恋人との暮らし、甘やかな未来を、菅原さんが現代の視点で、超訳し詠み直します。


もしも僕らが家を買ったら
家は薔薇と蜜蜂でいっぱいになるだろう

ちいさな街に午後がきたら
教会から祈りの鐘が鳴り響くだろう

午後の窓辺に光が射せば
宝石みたいに透き通る葡萄のふさは
うつろう影の中
陽を浴びて眠っているようだろう

その場所で
僕はどんなに君を愛するだろう


そして僕の心のすべてを
君にあげよう
皮肉好きな性格も小さな誇りも
ささやかな詩もすべて


もしも僕らが草原に住んだら
金色の蜜蜂が飛びまわるあの場所や

涼しげな小川のほとり、柔らかな草の影で
僕らはふざけ、笑いながらくちづけするだろう

ふたりに聞こえるものは太陽の熱だけ
君の耳にクルミの木が影を落とし
それから僕たちは笑うのをやめて
口をひとつにするだろう

言葉では言い尽くせない
ふたりの思いを語るために


そして僕は見つける
君のくちびるに
宝石のような葡萄の実と
赤い薔薇と蜂蜜の甘さを


「もしも僕らが家を買ったら」

フランシス・ジャム(1868 - 1938)

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新訳 世界恋愛詩集

菅原敏 /久保田沙耶

あまたの恋を書き残してきた、かつての詩人たちに、新訳という名のオマージュを。『新訳 世界恋愛詩集』は気鋭の詩人、菅原敏による新連載。いにしえの恋愛詩の輪郭を、菅原敏のいまの言葉でなぞっていきます。古い詩集に絵の具を落とし、新たな色で輪...もっと読む

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sugawara_bin 【台風夜のよみものに】 おやすみ前、甘やかな詩をひとつ。さよなら日曜日。 『もしも僕らが家を買ったら』フランシス・ジャム https://t.co/UmKoVKANOJ 「 3年以上前 replyretweetfavorite

sayakubota 本日更新【もしも僕らが家を買ったら】 →こちらよりどうぞhttps://t.co/8yN9qj6z7Y 『 3年以上前 replyretweetfavorite

sugawara_bin 『もしも僕らが家を買ったら』 連載『 『新訳 世界恋愛詩集』 菅原敏(詩人)×久保田沙耶(現代美術家) http://t.co/ypADrBvukF 3年以上前 replyretweetfavorite

zen_eno |新訳 世界恋愛詩集|菅原敏 @sugawara_bin /久保田沙耶 @sayakubota |cakes(ケイクス) これは、良いなぁ https://t.co/RkOqlo9vSx 3年以上前 replyretweetfavorite