「隠れ巨乳」とは何なのか
それにしても「隠れ巨乳」という言葉は不思議な言葉である。「隠し子」ならば隠している主体がいるわけだが、「隠れ」ているという状態を説明したにすぎない「隠れ巨乳」にも、「隠し」ている主体がほのめかされている。本来使われるべきは「隠れ巨乳」ではなく「隠し巨乳」だ。そんでもって、巨乳を隠しているのは、その本人なのだろうか、それとも他の誰かなのだろうか。
同じ用法で使われる「隠れ家レストラン」を考えてみたい。そもそもは、隠しているつもりも隠れているつもりもないお店が、外から「隠れ家のようですね」と認定されてしまった可能性が高い。しかしご存知のように、最近ではわざわざ表看板に「隠れ家レストラン」と書くような、偽りの隠れ家もそこかしこに量産されている。「裏の物置に隠れているからね〜」とメモ書きを手渡されて始まるかくれんぼは成り立たないが、昨今の隠れ家レストランってそういう素っ頓狂がまかり通っている。
乳房とは私たち自身である
説明するまでもないが、トップ女優に対して「実は隠れ巨乳では」と下世話に問われるのは、「隠さない巨乳」がまだまだ商売として定着しているからだ。友人の作った料理を最大限に褒める時に「すごい、これはお店で出せるレベル」と言うが、隠れ巨乳の場合も、巨乳市場に出せるほどなのにどうしてそれを出さないのか、というわけである。本人にそのつもりはなくても、議論は熱を帯びてしまう。
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