コピーはオリジナルに勝てるのか?—3Dプリンタは四次元ポケットである!vol.3

3Dデータがあれば何でもつくれる3Dプリンタ。今後さらに進化して、つくれるモノの大きさやサイズ、材質などもさまざまなバリエーションが登場するといいます。3Dプリンタで何でもつくれる時代がやってくるとして、それでは「オリジナル」の価値というものは保たれるのでしょうか? 海猫沢さんが考える、人間がモノを欲しがる本質的な理由とは。

つくったモノが自在に消える、夢の3Dプリンタ

海猫沢めろん(以下、めろん)田中さんが理想とする3Dプリンタってどんなものですか? 今のプリンタにはまだ不満があります?

田中浩也(以下、田中)現在の3Dプリンタは、「フィジタル」の実現にはまだほど遠いかなと思っています。理想は、モノを出力するときに、そのモノがどれくらいの期間存在していてほしいかを、電子レンジのダイヤルみたいなしくみでセットして、一定期間で消えるようなモノをつくるというシステムを実現することです。

めろん 『SFを実現する』のなかで書かれていた「FAB4.0」の段階ですね。3Dで作ったものを分解して、さらにその部品を再利用するという究極の循環型世界がイメージされていました。そこまでいくにはどのくらいかかりそうでしょう?

田中 4.0はかなり究極系として書いてます。それこそ万能細胞みたいな物質を作って、自由に組み合わせたり分解したりできるようなイメージです。現実にはまだまだですね。

めろん ではこの先数年の3Dプリンタの進化についてはいかがですか?

田中 方向性としては三つあると思います。大きさ、素材、ネットワークですね。まず、家を建てるような巨大なものをつくる3Dプリンタや、ものすごい小さな部品を作るような3Dプリンタができて、つくれるサイズのバリエーションが増えるのがひとつ。次に、金属や砂が使えるプリンタができて、素材のバリエーションが増えるのがふたつめ。あとはさっき言った3DFAXの実現。ネットワークにつながって遠隔転送が可能になる。例えば、来週オランダに行く人が、向こうでいつも使っている自転車にのりたいなと思ったら、データであっちに送っておけば、いつもの自転車に乗れる、という未来ですね。

ぼくはかつて運び屋の仕事をやったことがあります。 例えば、宅配サービスでジャカルタに自動車の部品を送るのには二、三日はかかりますが、人が飛行機で行くと半日くらいでいけるんです。だから、手荷物で部品を機内に持ち込み、最短で届けるのが運び屋です。3DFAXがあれば、それがもう必要ない。流通に革命が起きるかもしれません。手元に同じモノが残って場所をとるという重要な問題がありますが……。

おばあちゃんの形見が2つある?

しかし……ぼくはひとつ気になることがありました。

めろん 3Dプリンタで何でもできちゃうってことは……おばあちゃんの形見とか、物語性や希少性のあるものも複製できるということですよね? だとしたらそこに付随するアウラ(※)がどんどん薄くなっていっちゃうんじゃないですか?

※「いま」「ここ」にのみ存在することを根拠とする権威をあらわす言葉。機械的複製によって芸術作品のコピーを大量生産することが可能になった時代において、オリジナルの作品から失われたものとして論じられる。

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“すこしふしぎ”な科学ルポ

海猫沢めろん

漫画家・藤子不二雄氏はかつて、SFを「すこし・ふしぎ」の略だと言いました。そして現在。臨機応変に受け答えするSiri、人間と互角以上の勝負を展開する将棋ソフト、歌うバーチャルアイドル初音ミク、若い女性にしか見えないヒューマノイド……世...もっと読む

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