前編】リアルだけどリアルじゃないデートを

地方都市発のフリーペーパー「美少女図鑑」と写真家・青山裕企さんのコラボ企画「彼女写真」の2周年記念座談会。地方都市に実際に暮らす女の子と一日デートしたら……という設定で、毎月さまざまな都道府県のデートスポットをめぐる定番連載です。新潟編から始まり、北海道から沖縄まではばひろく紹介してきた「彼女写真」の2周年を記念して、青山さん、「沖縄美少女図鑑」で二階堂ふみさんや黒島結菜さんを発掘した名物編集長の西原伸也さん、cakes編集長・加藤貞顕が集合。過去のシリーズを振り返りながら、“美少女”の魅力、地方の魅力を語っていきます。(構成:小池みき)

女性を撮るのが「上手く」なりすぎないようにしている

加藤貞顕(以下、加藤) 「彼女写真」は、cakesの立ち上げ当初からの連載で、今年で3年目に突入しました。僕もすっかり、いろいろな「彼女」とデートした気分になっています(笑)。今日はその記念座談会ということで、写真家の青山裕企さんと、「美少女図鑑」の西原伸也さんにお越しいただいています。本当にありがとうございます!

青山裕企(以下、青山) 実際は僕も、写真を撮っているだけでデートはしてないですからね(笑)。

西原伸也(以下、西原) おじさん3人で大丈夫かな……と思いますが、いろいろ過去の「彼女写真」を振り返りながら、「彼女写真」ファンのみなさんと思いを共有しつつ、知らなかった方にもその魅力を紹介できる座談会にできればと思います。

青山裕企(以下、青山) 本当に、この2年でさまざまな土地をまわらせていただきました。もともと、「早い・安い・上手い」をモットーに近場で活動していたのであまり出張ってなかったんですけど(笑)、「彼女写真」の連載を通じて、最近ではむしろ「出張系」になってきました。

加藤 この2年で20以上の県をまわってますよね。東京でも、雑誌のグラビアの撮影のお仕事や映画の監督、「ミスiD2015」オーディションの審査員まで、かなり精力的にこなしているなかで、結構ハードだったのでは。


左から、青山裕企さん、「美少女図鑑」西原伸也さん、cakes加藤貞顕

青山 「彼女写真」については、場所の決定も当日のデートプランも、すべて「美少女図鑑」の方がやってくださるんです。なので、僕のほうは、数日前とかに「今週末に北海道でお願いします」とか言われたりして。毎月、次はどこに行くんだろうって楽しみです。

西原伸也(以下、西原) 僕は最近まで「沖縄美少女図鑑」に所属していて、「彼女写真」沖縄編の撮影の手配・同行をしました。たしかに青山さん、東京で会うときより楽しそうに見えましたね。

青山 アシスタントにも言われるんですよ。「彼女写真」の撮影だと断然テンションが高いって。僕はもともと名古屋出身なんですが、東京に住んでいる今だからこそ、地方の良さっていうのを感じていますね。「美少女図鑑」の「クールローカル」というコンセプトに従いつつ、「彼女写真」としての良さも出していけたらいいなと思っています。

西原 地方撮影っていいですよね。一日まるまる使うからご飯も一緒に食べるし、相手とも仲良くなるし。

加藤 ここまでに撮ったものをご自分でご覧になって、どんな感想をお持ちですか?

青山 若干、写真が上手になったかなあと……(笑)。

加藤 そうなんですか?(笑)

青山 でも、上手くなるっていうのは実は良いことばかりじゃないんですよ。上手くなるってことは、平凡になるということでもあるので。上手いという言葉だと語弊があるかもしれないので、言い換えると、「慣れる」ってことですかね。手癖で撮れるものが増えてくるというか。そこには抵抗していきたいなと思って、上手くなりすぎないような工夫を意識的に入れているんですよね。

加藤 なるほど。それは写真に限らない話かもしれないですね。

青山 3年目に突入したということで、今後の方針や新しい見せ方なども、「美少女図鑑」やcakesのみなさんと話し合っていけたらと思っています。せっかくのウェブ連載なので、過去の写真もこれを機にもっと多くの方に見ていただきたいですね。

撮った女の子には二度と会いたくない理由

加藤 「彼女写真」では地方のデートスポットをまわるんですが、モデルの女の子もその土地の子なんですよね。こうして見ていると、当たり前なんですけど、どの女の子にもそれぞれの都市らしさが感じられますよね。名古屋の子とか、すごく名古屋っぽくて、僕は好きです。


「彼女写真」名古屋編より

青山 そうですね。とくに名古屋は、高校まで住んでいたので思い入れがあったんですよ。「彼女写真」では、モデルの選定は「美少女図鑑」の方にほぼおまかせしているんですけど、名古屋は唯一僕から「ショートカットの子でお願いします」というオーダーを出したんです。この企画の裏コンセプトとして「僕が学生の頃に出来なかったデートを今さら体験する」というのもあるので、そこはこだわって「名古屋で僕の好みのショートカットの子とデートする」という長年の夢を実現させてもらいました。

西原 あのとき、すごく嬉しそうにしていましたよね(笑)。

青山 高校時代、僕は女性に対して「天真爛漫・純真無垢」っていう夢とか理想を描いていたわけですよ。もちろんそれは単なる少年の妄想で、実際にそんな女性はいないんだけど、このときのモデルのまおちゃんは、まるでその夢の女性みたいな良い子でしたよ。

西原 それがきちんと写真からも伝わってきます。名古屋編にかぎらず、「彼女写真」からはいい感じの“童貞感”がかもし出されていると思うんです。それって青山さんのそういうこだわりから出ているんじゃないですか?

青山 童貞感は大事にしていますね。既につきあっているカップルの写真ではなくて、男の子が練りに練ったデートプランで気になる女の子をエスコートしていて、女の子の方はそれにつきあっているだけ、という前のめりなイメージなんです。その雰囲気は崩さないようにしています。実際の撮影でも、我々撮影側ががっちりプランを組んでモデルの女の子を連れ回しているわけで、そこがちょっと重なるんですね。もちろん、リアルなデートとは違うんだけど。

西原 実際の地方のリアルなデートの行き先なんて大体イオンだからね。あくまでこんなデートがしたかった、っていう感覚に基づく写真なんだよね。手もつながないですからね。ドラマチックではない。

青山 そうなんです。これは僕や西原さんが共通して持っている傾向だと思うんだけど、「写真を撮る」という行為が、ある意味、自身の歪みの結果なんですよね。女性に対する向き合い方が歪んでいると言った方がいいかな。近づきたいけど近づくのが怖い、絶望感に包まれながらも期待感がにじみ出るというか。複雑な感情です。

西原 わかる。「美少女図鑑」とか「彼女写真」のモデルって、みんな本当に可愛くていい子なんだけど、だからこそ僕なんか、生身のままでは近づけない。写真でパッケージして、こちらでストーリーだけ作って眺めておきたいって欲望がある。写真で完結させたいというか。


「彼女写真」新潟編より

青山 撮った写真は裏切らないからね(笑)。僕も、こんなこと言うのはアレなんだけど、撮った子にはもう会いたくない、美しい思い出にしておきたい、って気持ちが沸き上がる瞬間があったりするんですよ……まさにデートした後の男の子の複雑な心境です。

西原 全然デートじゃないのに!(笑)

「昔見たかった光景」の中に住む、 “めちゃくちゃ可愛い”女の子たち

加藤 沖縄の撮影には僕も同行させてもらいましたが、沖縄編のさとのちゃんもすごく可愛かったですね。本当にいい子で、スタッフみんな彼女が大好きになってました。二階堂ふみさんや黒島結菜さんを見出した西原さんがイチオシする理由が、会った瞬間に一目瞭然でした。

西原 さとのちゃんのいいところは、東京ど真ん中の華やかな芸能界やファッション業界に憧れているわけじゃない、ってところなんですよ。「美少女図鑑」のモデルの子にはそういう子も多いんです。

青山 わかりますね。東京在住のモデルや芸能人の女の子たちにはやっぱり何かしら強く目指しているものがあって、それ自体は悪いことじゃないんだけど、ともするとそれゆえに、みんなが同じような「何かの模倣」に見えてしまうことがあるんです。でも、地方の子たちにはそれがない。

加藤 僕が、「美少女図鑑」のフリーペーパーを読んでいて一番すごいと思ったのもそこです。基本的に地元にいて、地元が好きでそこで暮らすことに満足していて、そしてその瞬間めちゃくちゃ可愛いっていう……。この純粋な感じは、他にはないですね。

西原 同じ青山さんが撮った写真でもね、すでに完成された、八頭身のぱりっとしたモデルの美女とデートする企画だったら、「好き」にはなりにくいですよね。そりゃ美人だなきれいだなとは思うんだけど。美少女図鑑の女の子たちは「好き」になっちゃいそうな、もっと身近な感じ。だからこそ、後で会いたくなくなるの。


「彼女写真」沖縄編より

青山 届きそうで届かない感じね。いや、届かないんだけど。

西原 僕らの手が届かないだけですけどね。届く人はたくさんいますから(笑)。

青山 テクニック的な話をすると、この企画では、一眼レフだけじゃなくて、コンパクトなデジカメやスマホとか、大小問わずいろいろな種類のカメラを使って撮影しています。というのはやっぱり「デート」なんで、相手にも構えないでいてほしいんですね。
 そして「女の子と一緒で緊張している感覚」で撮ることも意識しています。たとえば、しっかり構図などを決めた写真だけでなく、ある種“雑”な撮り方の写真も混ぜて、「せめて写真にだけでもこの子の姿を残しておきたい」と思っている男の子の手の震えみたいなものを表現するとか。

加藤 なるほど。だからこんなに可愛く見えるんですね。このアイスを食べているやつとか超可愛いじゃないですか。僕、さっきから「可愛い」しか言ってないな(笑)。

青山 コンセプトとしては、女の子の方は、こちら(男子)のことをそこまで好きじゃないんです。だから撮っているときも、僕自身をあまり意識させないようにしています。

西原 それはリアリティを出すためですか?

青山 そうですね。本当のデートには、告白するとか手をつなぐとかいろんなゴールがあると思うんだけど、「彼女写真」にはそれがない。でも、それが僕なりのリアリティなんですよね。こういう幸せなデートができたらもっと違った人生だったんじゃないか、みたいな(笑)。まあ、実際に幸せなデートをしていたら、少なくともこういう写真は撮れるようにならなかっただろうな。

加藤 「昔見たかった光景」をとことん追求しているわけですね。だから大勢の人に届くんだと思います。

次回、「【中編】“美少女”は属性ではない?」は10月10日(金)更新。
10月からスタートした
「彼女写真 再会編」では、沖縄編のさとのさんとの再会デートをお送り中。こちらもお楽しみください。(「彼女写真 再会編」は姉妹サービス「note」でも300円でご覧いただけます!)

この連載について

かわいいだけじゃない“美少女”の撮り方—「彼女写真」2周年記念座談会

美少女図鑑 /青山裕企 /cakes編集部

地方都市発のフリーペーパー「美少女図鑑」と写真家・青山裕企さんのコラボ企画「彼女写真」。地方都市に実際に暮らす女の子と一日デートしたら……という設定で、毎月さまざまな都道府県のデートスポットをめぐる定番連載です。新潟編から始まり、北海...もっと読む

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コメント

noradaiko 「童貞感」を大切にする。 - 約4年前 replyretweetfavorite

tani_345 青山さんのファインダーごしの女の子との距離感と愛で方がマジで私 https://t.co/F1XmLBOX1r 約4年前 replyretweetfavorite

ao_hal そうかー。近づくことも手を繋ぐこともできないから、撮る、んだと思う。 https://t.co/nZBaDyJogR 約4年前 replyretweetfavorite

nishiaratter おもしろい!ファンです。⇒ 約4年前 replyretweetfavorite