抑えた色調がきれいで、描かれているモチーフもかわいくってしかたがない。そんな絵画がたっぷり観られる展覧会が、東京の竹橋で開催中です。東京国立近代美術館での「菱田春草展」。
菱田春草は、明治時代に活動した、日本近代日本画における大御所です。明治に入って大きな変革を迎えた日本の絵画の世界を支えた、というよりも変革をみずから積極的に仕掛けていった画家でした。
そんな大人物の絵を、きれいでかわいいなどとくくるのもどうかとおもいますが、実際にそうなのだからしかたありませんね。展示は菱田春草の画業の全体像をたどるもので、さまざまなモノ、場、状況が描かれていますけれど、目に留まって強く印象を残すのは、小動物たちの姿なのです。
《春日》1902年
《柿に猫》1910年
たとえば、ネコ。白い毛に部分的な黒毛が混じるネコが、ひなたぼっこでもしているのか、じっとまるまって目を細めているのは《春日》です。いっぽうで《柿に猫》では、柿の木の根本で、落ち葉を踏む感触でも楽しんでいるかのような、元気な黒ネコの姿が描かれています。対照的な2匹ですが、ふんわりとした毛並みの表現が、愛らしさを強調しているのは共通していますね。
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