日本にはたしかにある、「知性」と「現場」との
理想的協業関係の実例は?
愛知県豊橋市に樹研工業という、ほとんどチリにしか見えない百万分の一グラムの世界最小・最軽量の歯車すら作れる、最先端の微細加工技術を持つプラスティック部品メーカーがありますが、その会社の社員採用は学歴不問で、しかも〝先着順〟だそうです。
先着順!? ええ、そうです。先着順だそうですよ。来た順番に採用で、テストも何もなしに決めるそうですが、それでも「9割以上の社員が定着し、使い物にならなかった人間はひとりもいない」そうです。
主力の技術者には、工業高校卒の人がいちばん多いそうですが、しかし普通高校卒や中卒も珍しくなく、他社が敬遠するような元暴走族や元番長、元不登校児もいるそうです。そういう人も徒弟制度のなかでシッカリ育て上げれば、世界最高の精度を出す職人として活躍したりできるわけですね。
日本には、このように学歴的には中卒だったり高卒だったりする人が叩き上げで技術を身につけて世界一になっている工場……といった事例はたくさんあります。そして、そういう事例を見ていくと、「町工場のオッちゃん社長」は、「ある程度大きいメーカーの大卒技術者」と「良い関係」を築いているんですね。
ある程度大きいメーカーの技術者は、良い大学を出た「勉強が得意」な人が多いですから、「概念」レベルでの話が得意ですし、世界の技術動向や最新の発明・発見などの知識も豊富です。
しかし、そこの「概念的に考えて追い込んだ結論」から「リアルな現実」までの「ラストワンマイル(最後の一歩)」には弱いことが多い……そこで「叩き上げのオッちゃん」の出番です。
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