東京の地下鉄表参道駅からほんの少し歩いただけで、この静けさと深い緑の景観が得られるとは。「穴場」とはまさにこのことですよ。広い庭園に包まれるかたちで建つ、根津美術館です。企画展が開かれる展示室1・2で、「名画を切り、名器を継ぐ 美術にみる愛蔵のかたち」がはじまりました。
不思議な展名ですね。これは、次のような意味のようです。美術品は長い年月にわたって受け継がれていくもの。趣味の変化や破損などに対応するため、作品はときに切断されて仕立て直されたり、補修が施されたりします。創作された時点とは異なるかたちで残されている作品を集めて、長く愛されてきた軌跡を眺めてみましょう、と。
歴代の所有者たちによる「改変」を愛でる、ということですね。なるほど、あまり類のない展示です。テーマも珍しくておもしろいのですが、それだけではありません。そもそも出品作が豪華そのもの。約100の出品作のうち、国宝が4件、重要文化財は35件に及ぶのですよ。
会場に入って、まず目に入るのは《
《瀟湘八景図 漁村夕照》牧谿筆 南宋時代・13世紀 根津美術館蔵