サイハテ

第7回 第1章

問石町にやってきた悠治と由希。目指すのは、かつて由希が両親と一緒に訪れた、母親の故郷――。

動画再生回数260万回を超えるボーカロイド楽曲の名曲が遂にノベル化! 
楽曲制作者・小林オニキスが自ら贈る、人と人が想いと願いをつなぐ物語『サイハテ』から一部を公開します。

♪オリジナル楽曲「サイハテ」の動画はこちら♪



 バスは山間部に向かって走っていく。
 駅前はまだ多少は拓かれていたような印象だったが、いくつか信号を経て、バスの停留所をいくつか過ぎるにつれて、景色はどんどん山へと近くなっていく。
 いつしか右手には大きな河が見えてきていた。その河に沿ってバスは流れるように進んでいく。やがて道は細く、次第に曲がりくねり始めた。山を登っているのだとわかる。山を登るにしたがって、横を流れていた河は視線の下のほうへと離れていった。辺りは薄暗くなり初めていて、道路の脇にところどころ建てられている外灯の白い明かりが、点灯していた。
 バス停をあと二つほど過ぎれば目的地である、見吉台みよしだいバス停留所だ。
「もうすぐ着くね」
「うん。この先のバス停で降りるのが一番近いはず」
「ちゃんと事前に調べてきてくれたんだね。ありがとう」
「調べてきたのが間違ってなければね」
 と僕は笑って返事をする。
 やがてバスは目的の停留所に到着したが、僕ら以外にここで降りる客はいなかった。
 さて、ここからどう行けばいいのか、と周囲を見回す。なんとなくバスが走り去ったほうへ向かって道を行く。すると、すぐ先にさらに山の中へと入っていく脇道があるのが見えた。
「あっ。たぶん、あそこだと思う。なんとなく覚えてる」
 彼女が指差した。
 僕たち二人は脇道を上がっていく。道は舗装されておらず、ところどころに石が階段状に置かれている。道の周りは次第に木々に囲まれていき、本格的に山の中へと入っていく。僕は歩幅を由希に合わせてゆっくりと歩く。ちょっと辛そうだ。
「大丈夫? もっとゆっくり歩く?」
「うん。ごめんね」
 息を上げながら由希は答える。
「かばん、持つから貸して」
「え、いいよ」
「いいから、ほら」
 そうやって彼女のかばんを手に取って肩から提げる。
「ありがとう」
 少し身が軽くなったのか、由希の声も軽くなったように聞こえた。
 道の奥のほうへ行くにつれて、周囲はどんどん暗くなっていく。
「これ、帰りは真っ暗だろうな」
 頭上を覆うように木が枝を伸ばしているため、空もあまり見えず、とても薄暗く感じる。

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サイハテ

小林オニキス

再生回数260万を超えるボーカロイドの名曲がノベル化! 楽曲制作者である小林オニキス氏が自ら贈る、“人と人が想いと願いをつなぐ”物語『サイハテ』の一部を公開します。 それは、たおやかな恋でした――。 ある日、中学二年生の水上...もっと読む

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