北海道バンドシーンの奇跡の交流

音楽・小説・漫画など、複数のメディアで展開される「カゲロウプロジェクト」。その作者であるじんさんに、前回のインタビューでは、その独特な曲の作り方を伺いました。今回は、音楽家としてのルーツに迫ります。その中で、あの同世代バンドたちとの意外な接点も浮かび上がってきました。


©KAGEROU PROJECT/1st PLACE ©じん/1st PLACE・メカクシ団アニメ製作部

THE BACK HORNと出会い、音楽の聴き方がまったく変わった

— 前回のインタビューでは、曲を作る際に、まずPVのような映像を思い浮かべ、そこから音や歌詞を組み立てていくという話を伺いました。そして、曲のタイトルはすごく早い段階で付けるという話になりましたが……。

じん それって、ごく単純な理由なんです。パソコンで作曲する時って、必ず曲のデータにファイル名をつけなきゃいけないじゃないですか。

— あぁ、そうか(笑)。

じん そうなんです(笑)。だから、曲を作り始めるときに、まず「こんな感じかな?」って思ったタイトルをファイル名にしておくんです。ただ、その時にはもう曲の世界観がブワーッと頭の中に浮かんでいる段階なので、結局はその時に付けたタイトルが最後まで残ることも多いですね。

— なるほど、まず世界観ありきとはいえ、それが最後まで変わらないのはすごい。

じん その最初に思い浮かべた世界観は、メロディーや歌詞を作っている間もずーっと頭の中にあります。それを形にするために、音と言葉を組み立てていく感覚ですね。

— 音楽家としてのルーツをお伺いしたいんですが、子供の頃にキーボードを習っていたそうですね?

じん はい。2歳か3歳の誕生日に、叔父から「カシオトーン」っていう小さいキーボードをもらいまして。それでCMの曲なんかを真似てたら、母親がすごく喜んでくれたりしたんですよ。

— 早くも耳コピで演奏してたと!

じん まぁ、調とかも全然違ってただろうし、特別なことをやっていたわけじゃないと思いますけどね。当時は、おもちゃで遊ぶ感覚で触ってたんだと思います。保育所でも、ひたすらひとりで鍵盤ハーモニカを弾いてたりしました。

— 「鍵盤なら俺に任せろ」、みたいな。

じん いやいや、僕よりもっとうまい子もいましたよ(笑)。ちゃんとキーボード教室みたいなところに通い始めたのは、確か8歳の頃だったと思います。それでも、小学校には僕よりずっとうまい子がいたし。僕は別にプロを目指すわけでもなく、単に好きでピアノやキーボードを触っていた感じですね。

— そこから、「音楽で何か表現をしてみたい」と思うようになったのは、いつ頃ですか?

じん 中学生の頃です。当時、大きな病気をしちゃって、1年近く学校に行けなかった時期があるんです。当然、すごく落ち込んでたんですけど、その時に『THE BACK HORN』※1 っていうバンドに出会いまして。「こんな音楽もあるんだ!」って、ガーンと衝撃を受けました。

※1 THE BACK HORN:1998年結成の4人組オルタナティヴ・ロックバンド。

— それ以前に聴いていたのは、どんな音楽だったんですか?

じん J-POPですね。山下達郎さんとか、ピチカート・ファイブとか。

— おー、すごいおしゃれ!

じん どっちも両親が好きだったんですよ。僕ももちろん好きだったんですけど、そういうJ-POPを聴く感覚と、THE BACK HORNを聴いた時の感覚って、まったく違ったというか……。THE BACK HORNに触れて初めて、音楽の持つメッセージ性というものに「あぁ、救われたなぁ」って感じたんです。

— 音を楽しむというより、メッセージを強く受け取ったんですね。それから、自分も音楽をやりたいと意識するようになったんですか。

じん そうですね。実際にバンドを始めたのは、高校に入ってからなんですけど。あの、『銀の匙』っていう漫画、ありますよね? あの舞台のモデルになった、地域の学校に通っていたんですよ。

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)
銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

— そうなんですか! ちなみに、ご出身は北海道の北端にある利尻島ですよね。

じん はい。利尻もかなり田舎ですけど、中学生の頃には、さらに田舎に住んでました。中学の全校生徒を合わせても10人前後、とか、そんな世界ですよ。アニメの『のんのんびより』※2 とか観てると、「あるある」って共感しますね(笑)。

※2『のんのんびより』:あっとの同名漫画を原作にしたアニメ。超田舎の小中学生の生活を描いたコメディ作品。

学祭では、モテるどころか引かれた

— 高校に入ってやっと、バンド仲間を探せる環境になったんですね。

じん はい。ただ、軽音部もない学校だったので、「僕、こういう音楽が好きなんだけど」って自己紹介をしながら、ひとりずつ趣味の合うメンバーを集めていった感じですね。

— じゃあ、じんさんが旗振り役だったんですね?

じん どうなんだろう? 自然に集まった感じじゃないかな?

— 高校生の頃は、どんな活動をしていたんですか?

じん 基本的にTHE BACK HORNのコピーばっかりやってました(笑)。僕は中学生の頃、吹奏楽部でパーカッションをやっていたこともあって、その頃はドラムを担当していたんです。学祭でTHE BACK HORNの『光の結晶』とか演奏しましたよ。「バンドで出れば、きっとモテる」と思ったんですけど、本気度が高すぎたのか、むしろ引かれてましたね(笑)。ボーカルのやつもすごくTHE BACK HORNが大好きで、山田さんばりの前の出方※3 で歌ってましたもん。

※3 山田将司:THE BACK HORNのボーカル。ステージの最前から圧倒的な声量で歌うのが特徴。

— すごく愛を感じるエピソードです(笑)。初めてオリジナル曲を作ったのは?

じん 高校3年の時です。当時、アマチュアバンドを発掘する音楽番組がありまして。

— コンテストに出るために、オリジナル曲を作ったんですか?

じん はい。その時は僕がギターボーカルをやっていて、オリジナル曲で地区予選に出場したんですけど……。結果は8組中7位でした。「あ、俺、才能ねーんだ」って思いましたね。

— 今では信じられませんね(笑)。

じん これ、書いてもらっていいかわからないんですけど……その時、1位だったのが、今は「phatmans after school」っていうバンドをやってる人たちなんですよ。同じ地域で活動してましたから、その当時から知り合いで。こないだも、ボーカルのヨシダタクミって人に、僕の曲を歌ってもらったりしたんですけど。


【IA】空想フォレスト - YouTube

— phatmans after schoolは、アニメ『夜桜四重奏~ハナノウタ~』のエンディングテーマなども手がけていますよね。今活躍している同世代のミュージシャンが、そんな近いところで邂逅していたとは!

じん ただ、同い年でバンドやってたって言っても、向こうはコンテスト1位で、僕らと違って大人気で……。そうだ! このこと、むしろ書いといてくださいよ。あいつら、当時からモテモテでしたよって! それから、Galileo Galilei※4 もほぼ同年代で、同じ北海道出身ですね。あの人たちも、高校生の時からスゴかったです……。

※4 Galileo Galilei:3人組ロックバンド。2008年に行われた第1回『閃光ライオット』でグランプリを受賞し、デビュー。

— その後のみなさんの活躍を考えると、当時の北海道のバンドシーンって、ものすごくアツかったんですね。

じん そうなんですかね。僕も、バンドをやっているうちに音楽をやることが本当に好きになって。高校卒業後、音楽専門学校に入ったんです。


さらなるインタビューが、dmenuの『IMAZINE』でつづいています。
“新しい音楽”を作ろうというつもりはない
ぜひこちらからお楽しみください。


構成:西中賢治 写真: Kobayashi TAXI


daze / days(DVD付)
「daze / days」(DVD付)

MEKAKUCITY V's [Blu-ray]
MEKAKUCITY V's [Blu-ray]

ライブインメカクシティ SUMMER'13(通常盤) [Blu-ray]
ライブインメカクシティ SUMMER'13(通常盤) [Blu-ray]

メカクシティアクターズ 6「ヘッドフォンアクター」(完全生産限定版)(Blu-ray Disc)
メカクシティアクターズ 6「ヘッドフォンアクター」(完全生産限定版)(Blu-ray Disc)

dmenu

この連載について

初回を読む
イマ輝いているひと、じん「カゲプロは、自分だけの夢物語だった」

じん

ネット世代を中心に、熱狂的な支持を受けているメディアミックス作品、「カゲロウプロジェクト」をご存知ですか? それは、不思議な能力を持った少年少女をモチーフにした楽曲からスタートし、小説や漫画、アニメ化もされました。この巨大なプロジェク...もっと読む

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません