ゴーストライターがいたら、こんなに死んでないです

ネット世代を中心に、熱狂的な支持を受けているメディアミックス作品、「カゲロウプロジェクト」をご存知ですか? それは、不思議な能力を持った少年少女をモチーフにした楽曲からスタートし、小説や漫画、アニメ化もされました。この巨大なプロジェクトのすべてを生み出しているのが、1990年生まれのクリエイター、じんさん。いまだ20代の彼が、これだけ大規模なメディアミックス作品を生み出したヒミツに迫ります。

じんがいま輝いている3つの理由!

音楽、小説、その他を手がけるマルチな才能!

じんさんは、楽曲の作詞・作曲だけではなく、文庫・コミックをはじめとするシリーズ累計650万部突破の書籍関連の原作、アニメ脚本なども担当しています。

小説を読むように聴ける楽曲!
カゲプロの楽曲は、歌詞に複雑な仕掛けが施され、まるで一遍のミステリー小説。ニコニコ動画やYouTubeなどに投稿された関連動画の総再生回数は、1億回を超えています(2014年9月時点)。

普遍性を持つキャラクターたち!

カゲプロには、不思議な能力を持った少年少女たちが登場します。その能力は、普通の人々が学校や社会の中で無意識に行っていることでもあり、多くの人々の共感を呼んでいます。

「別に僕がやらなくてもいいかな」って思うこともある

— 実にさまざまなメディアで創作活動をしている、じんさん。初対面の人に、自分の職業を説明するのって、すごく難しいですよね。

じん はい、すっごい難しいですね(苦笑)。

— 職業を聞かれた時は、いつもどんな風に答えるんですか?

じん そうですねぇ。たとえば、美容室で髪を切ってもらってる時に、「お仕事は何されてるんですか?」って聞かれたとしますよね。まずは、「作家、ですかね……」なんて答えてみる。そうすると、「あぁ、ドラマとか書いてる人ですね」「いや、ドラマじゃなくて、小説とか」「あぁ、そっちの……」って。だいたい、そのへんで会話終了。音楽もやってるっていう話までは、行き着かないですね(笑)。

— やってることの半分も説明できてないですね(笑)。では、この記事を読んでいる読者の方向けに、「カゲロウプロジェクト」、通称“カゲプロ”の全体像を簡単に説明させていただきます。まず、じんさんが2011年2月にニコニコ動画に投稿した『人造エネミー』というオリジナルソングが、プロジェクトの最初の作品とされています。これは、ボーカロイドが歌ういわゆる“ボカロ曲”ですが、ボカロ曲を作ったのはこれが初めてだそうですね?

じん そうです。それまでもバンドをやっていたんですけど、パソコンで作った音楽は『人造エネミー』が初めてです。

— その後、新曲の発表と平行して、2012年5月にじんさん自らが書き下ろした小説が発売。さらに、それらを原作とした漫画の連載もスタート。そのすべてのメディアで順次、続編がリリースされる中で、今年はアニメ化も実現しました※1 。このアニメ版でも、じんさんが脚本を担当されていますね。

カゲロウデイズ -in a daze- (KCG文庫)
カゲロウデイズ -in a daze- (KCG文庫)

カゲロウデイズ 1 (MFコミックス ジーンシリーズ)
カゲロウデイズ 1 (MFコミックス ジーンシリーズ)

じん そうです。ネットなんかでは、“ゴーストライターがいる”って言われてますけど……。

— かなり前からずーっと言われてますよね。

じん もしゴーストライターがいたら、俺、今頃こんなに死んでないですよ!って言いたいですね。いつも自転車操業みたいな状態で、ふらふらになって1日20時間くらい書いてたり……。その上で、グッズの監修もあるし打ち合わせもしなきゃといけないし……。僕の代わりにやってくれる人がいたら、ほんとにお願いしたいって切実に思ってるんですよ。

— その仕事量を想像するだけで、げんなりします(笑)。それでも、じんさんはなぜすべてに関わろうとするんですか?

じん いや、別にすべてを自分ひとりでやりたいって思ってるわけじゃないんです。「これは僕がやらなくてもいいかな」って思うこともあるんですよ。もし、このカゲプロが『カゲロウプロジェクト企画会議(仮)』みたいなきちんとした会議を経てスタートしたものだったとしたら、音楽は僕、小説は○○さん、と担当が分かれてたんだと思うんですよ。
 でも、実際は僕がひとりで始めて、みなさんからオファーが来るのをなんとかとりまとめて、ここまで自分で作ってきてしまったものなので。今では「この自分の頭のなかにある世界観を作品にまとめられるのは、自分しかいない」という状況になってしまっている、という感じですね。

4分半という時間の中で1本のストーリーを作る

— じんさんの作る楽曲は、歌詞が物語的な構造を持っていて、1曲を通して聴くと1本のストーリーが浮かび上がってきます。代表曲の『カゲロウデイズ』も、まず日常のワンシーンのような情景で始まりますが、最後まで聴くと、それが驚くべき非日常的な状況の始まりだったことがわかる、というものです。


【じん】カゲロウデイズ【MV】 - YouTube

じん そうですね。僕自身、「音楽の歌詞とはなんぞや?」ということはよくわからないんですけど、自分にとってはこういう物語的な歌詞がおもしろいかも、と思っただけなんですよね。1曲に与えられた4分半という時間の中に、あるまとまったストーリーがあれば、途中で聴くのをやめられないし、最後まで聴いたらそこに謎解きの答えのようなものを発見できる。自分がリスナーだったら、聴き終わった時にすごい気持ちよくなれると思ったんです。

— まるでミステリー小説や、ショートショートを読むような感覚があります。じんさんは、ショートショート小説の大家である星新一さんがお好きと聞きました。

じん そうなんです! 僕、子供の頃から星新一さんの本がほんとに好きで。今でも、星さんの作品世界にグッとくる“星新一ゾーン”みたいなものが、自分の中にありますね。僕の曲は、ああいうショートショートを音楽でやっていると言えるかもしれません。
 それから、作家の乙一※2 先生にもすごく影響を受けてると思います。乙一さんの本も子供の頃から好きだったんですけど、今読み返しても「これは新しい!」って思います。

— 確かに、カゲプロの楽曲には、乙一さんのホラー系の作品のテイストを持つものもありますね。

じん 実際に曲を作る時、「乙一さんのあの作品に出てくる団地の雰囲気に、バキッとハマる曲ってなんだろう」っていうところから、曲を作り始めたりすることもありますよ。

— そんな風に発想するんですね! 他のインタビューで読ませていただいたんですが、じんさんは曲を作る際、まずPVの映像のようなものを思い浮かべるそうですが。

じん そうです。物語の見せ場というか、ワンシーンですね。

— それって、具体的には実写ですか? アニメのようなものですか?

じん どっちもあるかな……。いや、実写が多いですね。自分がいつか見た風景だったり、初めて東京に来た時に受け取ったイメージを思い浮かべて、「こういうPVがあったとしたら、そこにどんな歌詞と音が鳴っているんだろう」と逆算して、曲を作っていくんです。

— 歌詞を先に書く「詞先」、曲を先に作る「曲先」という言葉がありますが、いわば「PV先」ですね。曲のタイトルも独特なものが多いですが、これはどの段階で考えるんですか?

じん 僕、タイトルを付けるのはすごい早いですよ。というのも、それには理由があって……。


次回「北海道バンドシーンの奇跡の交流」は9/30更新予定

構成:西中賢治 写真: Kobayashi TAXI


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この連載について

イマ輝いているひと、じん「カゲプロは、自分だけの夢物語だった」

じん

ネット世代を中心に、熱狂的な支持を受けているメディアミックス作品、「カゲロウプロジェクト」をご存知ですか? それは、不思議な能力を持った少年少女をモチーフにした楽曲からスタートし、小説や漫画、アニメ化もされました。この巨大なプロジェク...もっと読む

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コメント

nrht_e ねねばーと思ったんだけど、なんか、このインタビュー読んだ事ないやーってのがひっかかってよんでるhttps://t.co/js7GZujpvV 2年弱前 replyretweetfavorite

hilbert_d 【ボカロ】 約4年前 replyretweetfavorite

myrmecoleon 自分も小説は 約4年前 replyretweetfavorite

Jane_Na_Doe この見出しやばい。「」の間違いでは? 感が主にやばい。 約4年前 replyretweetfavorite