第66回】ドイツで一味違った旅をするならボーデン湖がおすすめ!

ドイツのシュトゥットガルトに在中の川口マーン惠美さんが、EUから見た日本や世界をテーマにお届けするコラムです。


ボーデン湖(以下、すべて筆者撮影)

人間が満足する要素が多く揃う「ボーデン湖」

ボーデン湖はドイツの南、ドイツとスイスとオーストリアの3ヵ国がぶつかるところにある。ドイツは海が少ないので、私のいるシュトゥットガルトなど南ドイツでは、昔は、一度も海を見たこともないという人も多かった。そんな彼らにとって、ボーデン湖はまさに海であった。

ボーデン湖と琵琶湖は形が似ていて、琵琶湖を時計回りに45度回転させると、ほぼボーデン湖となる。面積は琵琶湖の670平方キロメートルには及ばず536平方キロメートルだが、それでもかなり大きい。バーデン・ヴュルテンベルク州(州都はシュトゥットガルト)の住民の約半分が、ボーデン湖からパイプラインで引いてきた水を使っている。

ボーデン湖畔には、いくつかの市、そして、数々の小さな町や村が点在し、湖をぐるりと囲むように整備されている、平坦で穏やかな216キロのサイクリング道は大人気だ。自転車を停めて泳ぐも良し、自転車ごと遊覧船に乗って対岸に渡るも良し。荷物だけ次のホテルに運んでくれるサービスもあるので、年配のバイカーも結構多い。

サイクリング道だけでなく、ボーデン湖の観光はすべて穏やかだ。船に乗ろうが、湖畔の遊歩道を散策しようが、景観は美しくのどかで、温暖な気候に恵まれ、周辺は広大なワインの産地。新鮮な野菜と果物はおいしいし、湖で魚は獲れる。つまり、派手ではないが、人間が満足するための多くの要素が揃っている。

しかし、のどかすぎて何となくちょっと退屈なイメージもある。80歳になったら、私もこの静かで美しいボーデン湖でリゾートをしようかなという感じだ。


『魔笛』の舞台

超スペクタクルなオペラが楽しめる「ブレゲンツの音楽祭」

さて、その平和なボーデン湖の中で唯一エキサイティングなのが、ブレゲンツ(オーストリア)の音楽祭。これについては2年前にも書いたが、毎夏5週間だけ、湖上に作られた舞台で超スペクタクルなオペラが演じられるのだ。

舞台は島のようで、装置は毎回、特注アイデアと工夫がてんこ盛りになる。客席も、岸とつながってはいるが、これも水上。こうなると、演出も水上用の特別あつらえだから、アクロバットあり、スタントマンあり、歌手もボートに乗って出てきたり、水に飛び込んだりと、とにかく目を見張る超絶エンターテインメントの連続。目に入ってくるものが多すぎて、気を付けないと、音楽を聴き逃したりする。出し物は2年に一度、更新され、今回はモーツァルトの『魔笛』だった。

湖沿いに車でブレゲンツに近づいていくと、車窓から遠くに舞台装置が望める。『魔笛』の舞台は、小山のように盛り上がった円盤状の島で、それを囲むように、水面から3頭の巨大なドラゴンがそそり立っている。

このドラゴン、凶暴に歯を剥いているが、どことなく愛嬌がある。ドラゴンの全長は水面から27.3メートル。遠くから見ている分には、遊園地の遠景のようだが、客席から見上げるとかなり巨大で、その高さに圧倒される。

夜9時の開演のときは、まだ太陽が沈みきらず、水面は光が反射してキラキラと美しい。しかし、オペラが始まり、見入っているうちに日は沈む。いつしか辺りは闇のとばりに包まれ、気が付くと、舞台は鮮やかな照明で浮き出し、その後ろで湖のさざなみが鈍く光っている。舞台も観客もすべて含めて、最高にロマンチックな情景だ。舞台に座っているだけで幸せな気分になれる。

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シュトゥットガルト通信

川口マーン惠美

シュトゥットガルト在住の筆者が、ドイツ、EUから見た日本、世界をテーマにお送りします。

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