AKB48の内山奈月さんと『憲法主義』共著者で憲法学者の南野森さん
父と遊んだ「虫の名前だけしりとり」
—— 『憲法主義』を作る前に、ご家族で憲法について話すような機会はありましたか?
内山奈月(以下、内山) 直接憲法の話をするようなことはなかったですね。ご飯のときにニュースについて話し合っていたくらいです。でも父は絶対に選挙に行く人で、母や私にも「行かなきゃ駄目だぞ」と言っていました。
—— 勉強熱心なご家庭なんですか?
内山 興味を持ったものにはとことん取り組むっていう雰囲気はあります。もともと父が、星や虫など自然にかんすることが大好きなんです。空を指差して「あれがオリオン座だよ」と教えてくれたり、夏になると蝉の脱皮する瞬間を見せてくれたり。道ばたを歩く時もいつも虫を探しているんですよ。一緒に歩きながら、「ほらシロテンハナムグリがいたぞ」とか「アオバハゴロモは、こうやって手をかざすと枝をつたって反対側に回るんだ」とか言ってくるんです。些細なことなんですけど、そういうやり取りから受けた影響は大きいと思います。
—— 素敵なお父様ですね。そして、内山さんが虫の名前を今でもちゃんと覚えていらっしゃることに驚きです。
内山 「虫の名前だけしりとり」とかしてましたから……。
—— え、すごいですね!!
内山 虫って「リ」で終わる名前が多いんですよ。ルリボシカミキリ、とか。だからリで始まる虫を覚えなきゃと思って、「じゃあリンゴカミキリ!」、とかいっぱい覚えました(笑)。父はなんでもつきつめて研究するタイプで、ゲームをいっしょにやるときも、子どもの私にも手加減しないんですよ。私に本を渡して、「どうやったら勝てるか一人で考えなさい」って言うような人です。
知性派キャラになるために
—— お母様はどんな方なんですか?
内山 きびきびしていて、効率を重んじる人です。子どもの時から「優先順位を考えなさい」とか「物事を逆算して考えなさい」っていう注意をよくされました。『やることリスト帳』をプレゼントされたこともあります(笑)。でも厳しくはないですね。のんびりマイペースな父とテキパキしている母で良いバランスというか。あと母は文学が好きで、たくさん本を読んでいるんです。もともと、暗誦をすすめてくれたのも母でした。今回のようなお仕事をもらって、私も母のように、いろんな本を読んでおこうと思いました。
—— 『憲法主義』のなかでも、『福翁自伝』を読んだことが書いてあって驚きました。最近は何を読んでらっしゃるんですか?
内山 いまは村上春樹さんの本を読み始めています。うちは父も母も村上春樹さんが大好きで、村上春樹さんの初版本が全部そろっているんです。でも、そんなに村上春樹さんに恵まれた環境にも関わらず私はまだ読んでいなかったので、今『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を読んでいるところです。
—— AKB48の活動もあるし、大学の勉強もしなければいけないし、忙しいように思いますが……。
内山 いえ、高校の方が大変でした。大学に入ってからは拘束時間が短くなったので、ちょっと余裕が出たくらいです。なので、最近は新聞をしっかり読むようにしています。時事問題にも詳しくなりたいと思って。また南野先生にお会いしたときに、いろんなことを知っている自分でありたいんです。
—— すばらしいですね。そういえば、「これからは知性派キャラでいきたい」と書いていらしたのを見ました。
内山 えへへ(笑)。今まではそういうキャラじゃなかったですし、特に強い個性もなかったと思うんですけど……。でも、学業とアイドル業を両立しているアイドルは少ないので、そういう部分を頑張って、知的なキャラとして目立っていけたらいいなと思うようになりました
アイドルの必修科目はマーケティング!?
—— 大学で勉強していて、新しく興味が出てきた分野はありますか。
内山 あります! C言語です。
—— Google+でも、「プログラミングのセンスがあると褒められた」と書いていらっしゃいましたね。
内山 プログラミングってアプローチの方法がたくさんあるんです。だから、論理を知ったうえでの、ある種のひらめきも必要というか……。私はそういう論理的に考える課題が好きですし、長けてもいるんじゃないかと思います。もともと数学が好きなので。
—— 憲法だけじゃなくて、C言語アイドルもできそうですね! 今はまだ大学一年生ですけど、専門課程で何を学ぶか考えていらっしゃいますか?
内山 私が入ったのは経済学部なので、これからマーケティングを勉強していきたいと思っています。でも大学進学の前に『憲法主義』の授業を受けていたら、法学部にチャレンジしていたかもしれません。
—— 理論派アイドルにふさわしい感じですね。数学の中でも確率論が好きと書かれていましたし。
内山 そうですね。私はもともと、数学の色んなことを数式で証明できるところが好きなんですよ。渋滞を数式で証明するとか。今も、アイドルとして何をしたらより多くの人に喜んでもらえるのかとか、ぐぐたす(Google+)をどの時間に更新したら+が増えるのか、なんてことを考えながら活動するのが楽しいので、マーケティングの勉強とつなげていけたらいいなって。
—— この本を作る中で、マーケティング的な観点から意見を出したりはしましたか?
内山 この本に関しては、版元であるPHP研究所の方から逆にいろいろなことを教えていただきました。本当に熱心に工夫してくださったんです。アイドルファン以外の方にも手に取りやすいよう、帯を取ったらシンプルな表紙になるようにしようとか。本当にありがたいです。
ジュラシックパークでもアイドルでも大切なのは「動員」
—— 要所要所でさしはさまれる内山さんの手書きノートもとても読みやすいです。