所長・石田衣良 酸いも甘いも経験し尽くした恋愛プロフェッサー。
助手T郎 自他共に認める肉食系男子、35歳独身。合コン大好き!
助手S美 恋に仕事にいそがしい28歳女子。職業柄、お堅く見られるのが悩み。
景気の向上は婚活市場にどう影響する?
助手S美 世の中はいま、悩める独身女性であふれています。結婚はしたいけどなかなか新しい恋愛に踏み出せない、それに見合った相手とめぐり逢えない、あるいは彼氏はいるけどプロポーズしてもらえない……などなど、悩みの種類はさまざまです。
石田所長 結婚や恋愛は相手あってのものだから、うまくいかない理由も十人十色で難しいよね。
助手T郎 合コンをやってて感じるんですけど、最近は思いのほか男が余ってないんですよ。女子はわりとレベルの高い子をたくさん見かけますけど、男はろくなのが残っていない。
助手S美 うん、それは私も感じます。統計的には男性のほうが多いはずなのに……なぜ?
石田所長 つまりは女性が望んでいるレベルの男性が余っていない、ということだよね。それなりにイケていて、コミュニケーション能力が高くて、そこそこ稼ぎがあるような男性が、婚活シーンでは不足している、と。
助手T郎 そういうハイスペックな男はすでに結婚しているか、たいてい彼女がいますからね。
助手S美 では、婚活市場に出てこない男性は、いったいどこへ消えちゃったのでしょうか!?
石田所長 これは冗談だけど、ゲームやアニメの世界で二次元の女性を追いかけているのかもしれないね(笑)。
助手S美 冗談に聞こえませんよ……。
石田所長 でも、これからの数年は景気も良くなるだろうし、バブルの頃ほどではなくても、それに似たイケイケのムードに包まれると思う。女性にかぎらず男性も、その期間中に積極的に出会いを求めて、恋愛の場数を踏むことをお勧めしたいな。
助手T郎 その意味では、サラリーマンの給与水準が上がることで、「寿退社して専業主婦になりたい」と口にする女子たちにとっての“いい物件”が増えるかもしれませんね。
石田所長 短いスパンで見ればそうかもしれない。でも結局、アベノミクスや東京オリンピックというのは、景気にとって単なるドーピングにすぎないからね。向こう数年のあいだに国が投資するお金も、いつかは回収しなければならないし、景気の揺り戻しはまちがいなくやってくる。実際には必ずしもバラ色の未来が待っているわけではないことを、 知っておくべきだと思うな。
助手S美 うーん。やはり世の中、甘くないですね。
石田所長 だからみんな、これからの一時的な好景気を“タイムセール”のようなものと考えればいいんじゃないかな。いまのうちにいろんな異性と出会って経験を積んで、恋愛スキルを磨いておくべき。
助手S美 あわよくば、その過程で素敵なパートナーをゲットできれば理想ですけど。
石田所長 そうだね。ただし、女性はできることならあまり男性に依存しないほうがいい。精神面でも経済面でも。男性の多くは女性よりもぼんやりしたところがあって、いまだに終身雇用を信じている人だって少なくない。これからは女性の社会進出もさらに進んでいくだろうし、男女がもっと対等な関係でいることを前提とするべきだと思う。
助手T郎 たしかに、専業主婦の奥さんを養えるような男は、いまどき少数派ですもんね。
石田所長 そう。だから妙齢の女性は、これからの数年で仕事上のスキルを身につけて、なおかつ結婚相手も探す、という気概がほしい。恋愛においても、ひと頃流行った『SEX and the CITY』のように、女性が主導権を握る時代が来ると思う。
助手S美 私は奥手なので、できれば男性のほうにもっとイケイケになってほしいですけど……。
石田所長 そこは男性のあいだでも格差が生じるだろうね。いわゆる肉食系な男性というのも、変わらず一定数は存在し続けるはず。でも、女性はまちがいなくどんどん強くなっていくだろうから、そのぶん、一部の男性の草食化に拍車がかかる気がするなあ。
自分の価値観をくずすことからはじめよう
助手T郎 それにしても、女性はどうして結婚を急ぎたがるんでしょうね? 「次に付き合う人と結婚する」とか「今年中に結婚する」といった発言を、とくに三十代の女性からけっこう頻繁に耳にします。彼氏一人つくるのにも苦労しているのに、なぜ結婚相手が見つかると思えるのか、甚だ疑問です。
石田所長 うん、それはぼくも同感。もちろん、出産を意識すれば早い時期に結婚するに越したことはないわけだけど、実際に男女ともに初婚年齢は上がっているのが現実なのだから、女性はもう少し気持ちにゆとりを持ってほしいよね。
助手S美 でも、女性にとっては切実ですよ。一刻も早く幸せな家庭を築きたいというのは、独身女性の総意です!(キッパリ)
石田所長 その気持ちがわからないわけではないけれど、頑なに“次に付き合う人と結婚しよう”と決めてしまうと、次の恋愛になかなか踏み出せなくなってしまうよ。結婚は“次の次の相手と……”くらいに思っておけば、もう少し自由に動けるようになるはず。
助手T郎 そうそう。付き合うというのは、いわばトライアル期間ですもんね。
助手S美 それはそうなんでしょうけど……。
石田所長 それに、恋愛とは感情の所作だということを忘れてはいけない。感情が動くまえに結婚を決めるのは、あまりにも早計だよ。ルックスや経済力などの諸条件もたしかに大切だけど、感情を無視してそうしたスペックだけで相手を選んでも、その後の人生が幸せなものになるとは思えない。
助手S美 そういわれてみるとたしかに、結婚を焦るあまり、ちゃんと恋愛をしようという気持ちを見失っている女子は多いかも。
石田所長 でしょ? その点、“次の次の相手と……”と、まだ打席が残っている意識を持っておけば、目のまえの相手と一発勝負をする必要がなくなるよね。そうしたゆとりから、本来は狙わないようなコースの球を打ちに行ってみると、思いがけない出会いが得られたりするのも恋愛の面白いところだよ。
助手T郎 ああ、よくわかります。めずらしくカタめの公務員女子たちと合コンをやってみたら、予想に反してものすごく盛り上がったりしますもんね。
石田所長 これは先入観の問題でもあって、自分が当たりまえのように育んできた世界観を、一度くずしてみたら意外と道が開けることも ある、ということなんだ。
助手S美 それはどういうことですか?
次回、9/17更新予定
構成:友清哲
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