武田砂鉄
集団的に自衛しているTOKIO
ジャニーズのグループとして初めて出演した夏フェスが評判になり、先日放送された日本テレビの24時間テレビでもマラソンランナーを務めた城島茂のゴール直後の視聴率がなんと41.9%と、この夏の話題をさらったTOKIO。SMAPなどの他のジャニーズのグループに比べ、どこか地味な印象があったTOKIOですが、この躍進にはどんな意味があるのか。武田砂鉄さんが分析します!
「ゴスペラーズの中で誰が好き?」に答えるということ
「ゴスペラーズの中で誰が好き?」と聞けば大抵の女性は口ごもる。あのメインのサングラスの左にいる普通っぽい人かな、なんて答えを辛うじて聞き出しても、あのサングラスの人がメインってわけじゃないんだよ、と返す事になり、そしたらもう共有できる事なんてなくなるのである。たった5人か6人くらいいるだけで、誰が好きかを難なく議論できる状態が、どれほど贅沢であるかということを「ゴスペラーズからは選べない」は教えてくれる。ついつい、アイドルグループの「選り取りみどり」に目を慣らしていると、この前提のありがたみを忘れてしまうものだ。
「好きな人を選び続けてください」を維持するためのメンテナンス
とはいえアイドルの生命線は「この中からどうぞお好きな人を選んでください」をいかに保ち続けるかだから、AKBにしてもその前例にあたるモー娘。にしても、組織を膨張させ、その上で人事異動を行い、血行促進を図るという手をとることになる。しかし、「辞めます!」「移籍します!」「入ります!」という手段を乱発して、その衝撃を連結させているだけでは、いずれ「!」の効力は弱まり尻つぼみとなって、萎れてしまう。「じゃんけん」したり、「大人」を入れたり、「バイト」を入れたり手を尽くすわけだが、それは「好きな人を選んでください」を維持するためのメンテナンスにすぎない。味に飽きたらゆず胡椒を入れてみてください、少し風味が増してまた新たに楽しめますよ、という料理のように。
動かぬチームにメンテナンスを加え続けるジャニーズのタフさ
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この連載について
武田砂鉄
365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む
著者プロフィール
ライター。1982年生まれ。東京都出身。大学卒業後、出版社で主に時事問題・ノンフィクション本の編集に携わり、2014年秋よりフリー。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)がある。2016年、第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。「文學界」「Quick Japan」「SPA!」「VERY」「暮しの手帖」などで連載を持ち、インタヴュー・書籍構成なども手がける。
Twitter:@takedasatetsu