第7回】現役社長4人が明かす運用一覧 独自の哲学でリスクを見極める

数億円の資産を日常的に動かす富裕層は、どのような投資をしているのか。富裕層を顧客に持つ外資系プライベートバンクの資料や企業オーナーたちの証言から、投資のスタイルと哲学を探る。

 「1日で数千万の資金が吹き飛んだことは何度もありますよ」

 都内にオフィスを構える30代の男性経営者は、そう言ってはばからないが悲愴感はみじんもない。数億円の資産を運用しながら損失による痛みから逃げず、その後も投資術を磨き上げることで、利益を積み上げてきたという自信があるからだ。

 給料日前に薄くなった財布を見てカップ麺をすするような、投資と無縁の会社員にすれば、想像し難い世界だ。

 一般の人が定年まで働いても届かない何億円もの資金を、日常的に動かす富裕層は一体どのような金融商品に目を付け、投資をしているのか。富裕層に資産運用の提案をしているプライベートバンク(PB)のデータを見れば、その一端が垣間見える。

 ある外資系の大手PBが、ミドルリスク型の投資として推奨しているポートフォリオ(資産配分)を見てみよう(図2‐6参照)。まず欧米や日本、新興国の株式に45%、日本国債や新興国債券などに25%、ヘッジファンドに15%、金などの商品に5%といった構成になっている。

 最もリスクが低い安全志向型の投資では、債券に80%の資金を充てるが、詳細を見ると、日本国債のほか、ハイイールド(高利回り)債や社債などに細かく資産を配分。同種の金融商品で効果的にリスクを取りながら分散投資しているのが特徴だ。

 さらに、外資系PBが推奨するどのポートフォリオを見ても、現預金などリスクを回避するための資産の割合は、1割に抑えている。

 一方で、日本の平均的な富裕層に目を向けると、PBの戦略とは大きく事情が異なり、投資リスクを必要以上に避けるような姿勢が目立つ(図2‐7参照)。

 米証券大手のメリルリンチなどがまとめた「ワールド・ウェルス・レポート」によると、日本の富裕層の金融資産に占める現預金の割合は、29%にも上る。株式の割合というと19%しかなく、諸外国と比べても圧倒的に小さい。

 背景には100万ドル以上の金融資産を持つ日本の富裕層は、80%以上が55歳を超えており高齢者が多いという事情がある。退職後の生活資金を考え、資産を増やすことよりも守ることに目が向いているのだ。

 では、外資系PBなどが営業攻勢をかける、投資に積極的な富裕層はどのような人たちなのか。答えの一つが企業オーナーだ。

 富裕層へのリテール営業を強化している関東の地方銀行担当者は、資産が10億円前後の顧客のうち「企業オーナーは55%を占めており最も多い」と明かす。

 企業オーナーは日々大きな事業リスクを背負いながら生活している。そのため、土地持ちの富裕層などに比べて、投資リスクに対する許容度も必然的に高くなるというわけだ。

富裕層の資産配分に見る
投資スタイルと哲学

 今回の連載では企業オーナーたちが多く登場する。実際にリスクを見極めながら独自の投資哲学で資産運用している企業トップ4人に話を聞いた(図2‐8参照)。

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富裕層のカネと知恵【2】~お金持ちの失敗から学ぶ 資産運用の裏側と投資哲学

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富裕層でも失敗はする。海外移住しても途中帰国、海外投資では詐欺に遭う。おまけに当局の監視は強まる一方だ。それでも財産を増やしているお金持ちがいる。彼らの運用の裏側と投資哲学を探った。※この連載は、2012年10月20日号に掲載された特...もっと読む

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