山内宏泰
五木田智央「TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」——ゆらぐ世界をのぞきみる
顔のない肖像画、ハート型の頭部をもった女性……。この世界で見覚えのあるもののようで、異世界の事物たちを描き出しているような不気味さを持つのが、五木田智央の絵画です。今回ご紹介するのは、千葉県にあるDIC川村記念美術館で開催中の、「TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」。まるで異世界を描いたような作品の数々を見ているうちに、夢のなかに入り込むような錯覚を得られるはずです。
千葉県佐倉市の郊外に来ています。立派な樹木が並ぶ林を抜けて、畔に草花が咲き誇る池を見ながら進むと、かわいらしさ漂う建物が。「DIC川村記念美術館」です。ここで五木田智央の個展「TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS」がはじまりました。
館内に入るとまずは、常設展をひと通り見られるかたちになっています。個展を観に来たのに……、などと焦ることはありませんよ。というのも、常設の充実ぶりは目を見張るものがあるからです。モネ、シャガール、ピカソ、そしてレンブラントの肖像画。巨匠の作品が続々と出てきて、一枚ずつに足を留めてしまいます。
抽象絵画のマーク・ロスコは、専用の鑑賞室が設けられていますし、箱型のインスタレーション作品で知られるジョゼフ・コーネルも何点か並んでいて魅力的。独自の青色で作品を塗り込めるイブ・クラインの作品も小さいながら存在感を発揮します。
ずっと進んで、ようやく五木田智央の展示室へと至ります。五木田はイラストレーションを雑誌メディアなどに発表する活動が目立つアーティストですが、同時に大型作品にも取り組み続けてきました。美術館では初の個展となる今回は、キャリアの全貌をたっぷり見られる機会になっています。
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この連載について
山内宏泰
世に“アート・コンシェルジュ”を名乗る人物がいることを、ご存じでしょうか。アートのことはよく知らないけれどアートをもっと楽しんでみたい、という人のために、わかりやすい解説でアートの世界へ誘ってくれる、アート鑑賞のプロフェッショナルです...もっと読む
著者プロフィール
ライター。美術、写真、文芸その他について執筆。著書に『写真のフクシュウ 荒木経惟の言葉』(パイインターナショナル)『写真のフクシュウ 森山大道の言葉』(パイインターナショナル)『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)『写真のプロフェッショナル』(パイ インターナショナル)『G12 トーキョートップギャラリー』(東京地図出版)『彼女たち』(ぺりかん社)など。東京・代官山で毎月第一金曜日、写真について語るイベント「写真を読む夜」を開催中。東京・原宿のスペースvacantを中心に、日本写真を捉え直す「provoke project」開催中。
公式サイト:http://yamauchihiroyasu.jp/