パリはすっかり秋。セーターやコートを着ている人を見かけるほど寒くなってきました。ヴァカンスは長いのに、パリの夏はあっという間に終わってしまいます。
前回お話しした通り、私は今年のヴァカンスは3週間ロンドンで過ごしました。
夏休みの間日本に帰国するロンドン在住の知人から、愛猫の面倒を見に来てほしいと頼まれたのです。
パリ〜ロンドンまで電車で2時間ちょっとで行けます。東京—大阪間とそう変わらぬ距離なのです。なのに、3週間過ごしてみると、パリとロンドンにはたくさんの違いがあることに気がつきました。
今回は、そんなパリとロンドンを比較して、パリの素顔を引き出してみようと思います。
ロンドンの地下鉄は◯◯い!
まず、パリとロンドンの違いとして目についたのは地下鉄です。地下鉄の開通はロンドンが世界初なんだそうです。だからでしょうか? 150年近くの歴史をもつ「The Tube」(※)の 車両はとっても小さいんです!
※ロンドンの地下鉄の愛称
しかし、どちらかというとパリジャンよりもがっちりとした体格の多いロンドナーたちは、この小さなチューブの中で窮屈そうにしていました。さらに、ラッシュ時には東京に近い混雑ぶりに、私は混雑が収まるまで何度も電車を見送るはめに。
以下の写真がパリの地下鉄「メトロ」のようす。
混雑しても、まだロンドンよりは余裕があるメトロの車両サイズ。車体もチューブのかまぼこ型とちがって、四角です。
パリよりロンドンの地下鉄が快適だなと思った点も多くあります。
パリの場合、電車の中で物乞いの演説を始めてしまう人や、ホームに座り込んで「J’ai faim」(お腹がすいています)のプラカードを持って物乞いをする人がいます。そして、大きな駅では小便くさいニオイがすることなんてしょっちゅう! また、安全面でも注意が必要です。駅ではいつもあらゆる言語で「スリに気をつけてください……」というアナウンスが流れているんです。もちろん日本語もしっかり流れますよ。
ところがロンドンではホームレスもほとんど見なかったし、小便くさくもない。ガイドブックには「地下鉄の長〜いエスカレーターでスリにあいやすい」と書かれていましたが、そこだけ!?と驚きました。パリだと、四六時中あらゆるところで気を張っていなくてはならないのです。
どれだけパリが物騒なんだ!って話です。
ロンドン名物の二階建てバスも、パリのバスと比べるとものすごく安全運転。乗るだけでワクワクし、必ず二階まで上がってしまいました。クラクションを鳴らす回数も少ないと感じました。パリのバスはしょっちゅうデカいクラクションを鳴らすので、自宅にいても十分聞こえるほどなのです。
滞在中は、レンタル自転車も利用してみました。パリでは「Velib」(ヴェリブ)というレンタル自転車のサービスがあり、私も年間パスを持っているほど日常的に利用しています。ロンドンにも同じようなサービスが浸透していましたが、一日券が3ポンド(約500円)でパリの2倍! 一度降りても、30分以内に新しい自転車に乗り換える場合は、無料です。
自転車には、スポンサーの銀行の宣伝がされていました。
実際に乗ってみると、パリのヴェリブより運転しやすく、システムもロンドンの方が効率よくストレスなく利用できました。
パリと同様、自転車は車と同じ道を走るのですが、真っ赤な二階建て巨大バスがどんどん後ろから追ってくるのがちょっと怖かったです。
クールなロンドナー、フェミニンなパリジャン
フランス人=金髪が多いと思っている日本人は多いと思います。しかし、実際にパリで暮らしていると、金髪のパリジャンは珍しい方で、金髪を見つけたとしても染めていることが多いことに気づきます。
ところが、イギリスに行ってみると、金髪の人が多くてびっくりしました。バスに乗っただけでも女性の乗客のほぼ全員が金髪に近い髪の毛なのです。
髪の毛だけでなく、顔つきもパリジャンたちとは違います。ロンドン美人は、クールな顔つきが多いと感じました。化粧やファッションはこれといったロンドン・スタイルがあるというよりは、人それぞれの印象を受けました。パリの美人はどちらかというと「フェミニンでアンニュイな表情+真っ赤な口紅」が定番で、それにより色気を演出しています。男性の顔つきも、ロンドナーたちのほうがパリジャンよりも、骨太でいかつい人が多くいました。
街なかだけでなく、テレビを見ている時にも外見に驚かされることがありました。
テレビ司会者のおヒゲとシャツのデザインにご注目。
こんなどこで買ったか分からないシャツ&無精!?ヒゲ。
これが彼のスタイルなんでしょうか? 謎です。
ほかにもこんなぶっ飛んだ髪型をした人も!
斬新すぎる!
フランスでは、テレビ司会者はもちろん、ニュース番組の司会者ですら、いかに「シック」(上品で洗練されている)であるかを意識していたのかということに改めて気づきました。
パリのテレビ司会者にはゲイの方が多いのも特徴的。この方ももちろんそうです。
ロンドンの接客は親切!
見た目だけでなく、接客態度もパリとは違いました。
スーパーで買い物をしたんですが、1ポンドのものに20ポンドのお札を出すお客さんが、店員に怒られていなかったんです!
私がいつも利用するパリのスーパーだと、まず「細かいお金はないのか?」と言われ、「ない」と答えると「お釣りがない」と言われて終了。モノを売ってくれないこともよくあります。
先日も、小銭がないマダムがレジ前で 店員に「マダム、10ユーロ札もらっても釣りないわよ」と言われて困っていました。結局、見かねた他のお客さんがマダムのために小銭を両替してあげていたのです。
ロンドンのスーパーでも、たまに小銭が不足しているときがあるようでしたが、そんな時は「小銭お持ちではないですか?」と、ものすごく丁寧に聞かれました。このパリではあり得ない真摯な接客に、私は涙が出そうになりました!
ひとつイヤだったのは、支払ったお金が偽札かどうかを確認されたこと。イギリスでは偽札が出回ることが多いようで、小さな個人商店でも偽札をチェックする機械を持っているのです。これには疑われているような気がしました。
ちなみに、スーパーの売り場ではさらにおもしろいことに気づきました。野菜でも洗剤でもお菓子でも、何でもかんでも「3 for 2」という表示があるんです。これは「3つ買ったら2つぶんの値段に割引きします」という意味なのですが、「買え!もっと買え!」とプッシュされているようで落ち着きませんでした。パリでもこういう売り方はあるものの、ごく一部の特価品だけなのです。
庶民の味方・チャリティーショップ
ロンドンを歩いていて、必ず見かけたものがあります。それは「チャリティーショップ」です。
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