漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?
自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。
(作者:福本伸行講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)
自分に期待することで人生が開ける
経済が成長し、社会が成熟してくるに従って、ビジネスパーソンは目標を持ちづらくなります。いま、日本はまさにそのような状態です。
ただ、日本人が目標を持っていないのは、環境のせいだけではありません。自分に期待しないのが大きな原因の一つです。
いま、多くの人が、自分に期待していないと感じています。さらに言うと、「敢えて期待していない」のだとぼくは感じています。単に「期待していない」のではなく、「敢えて、自分にはできない」と思うようにしているのです。そしてそれを、"チャレンジしない言い訳"にしているのです。
「そうじゃない、自分が期待を持てないのは、こんな時代だからだ」
そう思いたくなる気持ちもわかります。では、またイメージしてみてください。世の中に、あなた一人しかいなかったとします。それでもあなたは、これをやってみよう、これにチャレンジしてみようとは考えませんか?
自分しかいないのに、「これをやってもできないかもしれないなぁ、だからやめておこう」と思うでしょうか? そうは考えないはずです。失敗を恐れるのは、他人の目があるからです。そして、他人の目を恐れるのは、自分の評価やイメージが下がると思っているからです。
期待しなければ、チャレンジして失敗することがありません。そして、失敗しなければ、落胆したり、傷ついたりすることがありません。そして、周りから「あの人、失敗した」と後ろ指を指されずに済みます。だから、自分に期待せず、チャレンジもしないのです。
人が目標を持たない、自分に期待しない理由は、社会環境が悪いからではありません。実際は、「自分が傷つきたくないから」なのです。「どうせオレなんて」「ワタシには無理」と言っていれば、明確な負けがつかなくて済みます。そうやって、自分を守っているのです。
「時間がない」というオールマイティな言い訳
「時間がない」と言っている人も同じです。「本を読みたいけど、時間がない」「運動したいけど、時間がない」。これは、失敗をしたくない人の言い訳です。
「時間がない」ということは、「時間さえあれば、できる」ということですね。「自分ができないのは、時間がないからだ。自分にはそれをやる能力も意思もあるが、時間がないから仕方ないんだ。自分のせいじゃない」と一生懸命言い聞かせているのです。
でも、それが嘘であることはすぐにわかります。「本を読む時間がない」と言っている人が通勤電車の中でスマホをいじっている光景は、みなさんも見たことがあるのではないでしょうか?
時間がないのではありません。やってみて挫折するのが怖い、やってみて何も成果が出ないのが怖いのです。「自分はまだ本気を出していない」と余裕ぶることで、"査定"されることから逃げているのです。
映画版「カイジ」の中で、カイジが遠藤に言った「まだ途中・・・ 途中だから、こんなんだけで・・・」というセリフも同じです。これはつまり「ゴールまでいったら、俺はすごいぞ」と言いたいのです。これが正しくないことは、遠藤だけでなく、読者のぼくらにもすぐにわかります。そして、もちろんカイジも自分で気づいていました。
誰もが、常に「失敗」している
ただ、減点思考を持っていると、自分に期待しづらくなっていきます。チャレンジしなければ失敗しないからです。よほど自信があることでなければ、チャレンジしようとしないのです。
たしかに、負けること、失敗することはいい気分はしません。悔しいでしょう。その感情は正しいと思います。真剣に勝とうとした証拠ですから、それはむしろ好ましい感情だとさえ言えます。
ただ、ここでぜひ知っていただきたいのは、「誰もが失敗している」ということです。これは「誰もが失敗を経験してきた」ではありません。誰もが、現在進行形で「いま失敗している」のです。
今をときめくインターネット企業の多くも、新規事業への参入と退出を繰り返しています。メディアでは華々しく活躍が報じられているため、すべてがうまくいっているように思うかもしれません。しかし実際はそうではありません。まずやってみて、失敗したら手を引くというトライ&エラーを続けているのです。最初からすべての"正しい道"が見えている人などいないのです。ぼくも独立して、これを痛感しています。
ぼくは、2013年に一般社団法人を立ち上げ、"難しいことをわかりやすく説明する力"を身につける「説明力養成講座」を主催しています。もともと、サラリーマンを辞めた時には、「これからは作家として生きて行こう」と決めていました。なので本や連載を執筆することには慣れていましたが、人前で講演したり、ましてや自分で講座を企画して、集客し、開催することなど、まったくの門外漢でした。
最初はそれこそ、どこで会場を予約すればいいのか、そもそもどんな会場を選べばいいのか、値段はいくらが妥当なのか、資料はどうやって作るのかなど、すべて手探り状態でした。
それでも何とかいろいろ勉強して、2011年の春に2時間の講座を開催することができました。それなりに準備し、がんばって作り上げたつもりでしたが、いざ実施してみると、数え切れないほどの課題が見つかり、自分の至らなさを痛感する結果となりました。
その課題をひとつずつ解決し、その次も開催しました。しかし、また新たな課題が浮き彫りになります。その次も同じです。一つの課題をクリアーし、ひとつのことができるようになると、必ず新しい課題が見えてきます。つまり、それほど未完成の状態からスタートしていたのです。
他人を見て「すごいなぁ」と思っていても、実際は完璧とは程遠いものです。本人も「完璧から程遠い」ということを知りながらやっています。だから、自分にはあんなすごいことはできない、自分はそんなにすごくない、と卑下する必要はありません。みんな失敗しながら、少しずつ改善をしているのです。
また、チャレンジすることが怖い人は、往々にして「完璧」を求めています。完璧じゃないといけないと思っています。しかしそんなことはありません。行動している人たちは、行動しながらどんどん改善をしています。見方を変えると、「最初はダメダメだった」ということです。
「鉄人28号」は、28番目の鉄人です。27号が故障したり、敵に負けたりしたので、その弱点を補強して28号ができているはずです。そう考えると、27号は、28号よりも弱かった。そして、26号はもっと弱い、15号はもっともっと弱い。「鉄人1号」なんて、もしかしたら空き缶でできていたんじゃないか、とさえ思ってしまいます。もちろん、これは冗談ですが、最初はそれくらい未完成なものなのです。
最初は適当でいいということではありません。少なくとも本人たちは「これで完璧」と思って、本気でスタートします。しかし、実際に動いてみると、うまくいかないところが多かったり、機能しなかったり、たくさんの不具合が見つかります。それが当たり前なのです。
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