カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話 【第4回】人生を変えるために知っておかなければいけないこと

経済が飽和状態の中で「目指すべき上」を見失った今、私たちが生きる指針とすべきことは何か。自由競争の中で「がんばれば夢は叶う」と言われつづけてきた私たちが、夢が叶わないことに気づいたとき、どうやって生きていけばいいのか……カイジによって示された「人生を変える道」をベースに「自分の足で立ち、人生を切り開く」ヒントをご紹介します。

漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?

自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。

(作者:福本伸行講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)

「もっとお金があれば人生が変わる」
「この嫌な会社を辞めて転職したら人生が変わる」

そう思っている人は多くいます。ですが、実際は宝くじに当たって一時的に"億万長者"になっても、人生は変わりません。その「嫌な会社」を辞めて転職しても、おそらく人生は変わりません。人生を変えるためには、自分の考え方と行動が変わらなければいけません。

一時的に恵まれた環境を提供されたとしても、自分が変わっていなければ"元サヤ"に戻るのがオチです。

では、どんな考え方をすればいいのか、どんな行動をとればいいのか---。カイジから学ぶ生き方を変える哲学をご紹介します。

その仕事は、おそらく10年後には存在しない

残念ながら、現在存在している仕事の多くは10年後にはなくなっていることでしょう。その商品が10年後に存在している可能性が極めて小さいからです。もしかしたら、みなさんが勤めている企業もなくなっているかもしれません。新しく立ち上がったベンチャー企業も数年のうちに、その多くが消えてしまいます。

さらに言うと、仮にその仕事が存在し続けていたとしても、みなさんが引き続き求められているとは限りません。

前作『カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話』で、現状維持は後退であるという話をしました。自分では同じ場所にとどまっているつもりでも、周りは進歩しています。また、自分では気づかないうちに、ライバルがより効率的な方法を見つけ、より高い品質で、より安く商品を提供しているでしょう。

それは、直接的にみなさんから見える範囲で起きているのではありません。みなさんの職場に突然ライバルが「今の従業員の代わりに私を雇ってください」と直訴してきたら、誰だって「ライバルの出現」を自覚することができます。ですが、そのようなことはほぼありません。

みなさんのライバルになる人材は、「商品」の形で現れます。つまり、ライバル商品が登場し、自社の商品が売れなくなります。その結果、ライバル社の人員は増え、みなさんの会社の社員は減ります。つまり、みなさんがクビの危険にさらされるということです。

機械に勝てなければ、職を失う

みなさんの敵となるのは、ライバル企業だけではありません。これからの時代、労働者は機械やテクノロジーと戦っていかなければいけません。

みなさんがこうしている間にも、機械が人間の仕事をどんどん奪っています。人間が身体を動かす仕事の多くは、機械の仕事に置き換えられています。人間が行うよりも、機械がやった方が圧倒的に効率がいいからです。

そして人間は機械がちゃんと動いていることを監視・管理する役と、機械ができないほんの一部の作業を担当するだけになります。

これから先、この動きはどんどん加速していくでしょう。今は機械が行っていない仕事でも、やがては機械化が必ずなされます。

たとえば、レストランの調理場。今は人間が鍋を振っています。でも、単純作業であれば、機械でもできます。ファーストフードのフライドポテトは、ずいぶん前から機械が揚げています。人間は、ポテトを揚げ物用の網にいれて、沈めるだけ。機械が油の温度を調節し、時間になったらアラームを鳴らします。

企業は、できるだけ効率化を図りたいと思っているので、人間の労働者を機械に置き換えたいと、常に考えています。誤解を恐れずに言うと、現状、人間がやっている仕事は、ただ機械ができないから人間がやっているだけです。人間にやってもらいたいと思っているわけではないのです。

これからは、人間のライバルだけを見ていても意味がありません。人間のライバルと相撲で勝負をしていたら、機械が砲弾をぶち込んできて、土俵ごと吹っ飛ばされるということになるのです。

さらに厄介なのは、最近は機械に加えてテクノロジーも人間の仕事を奪っていっている、ということです。機械は、どちらかというと、人間の肉体労働を奪っていきます。そして、テクノロジーは、人間の知的労働を奪っていきます。

少し前から「ビッグデータ」という言葉が出てきていますよね。ありとあらゆるデータを集め、それを分析することで「正解」を導き出そうとしています。典型的なのがSuicaに代表される電子マネーの買い物データです。

東京駅から渋谷駅まで電車通勤する人が、電車に乗る前にコンビニでコーヒーと新聞を買い、駅のキヨスクでガムを買い、昼休みにお茶を買い、仕事が終わってから新宿でとんかつを食べた、などといった情報がすべて集められることになります。

そのような「ありとあらゆるデータ」を集めて、消費者の購買傾向を調べることができます。そうすると、もちろん、消費者に個別にアンケートを取って「今朝、何買いましたか?」などと聞く必要はありません。

Aという商品とBという商品が同時に買われていることなども、誰かに聞くまでもなく統計的にわかります。消費者の居住地とも掛け合わせて分析ができるので、千葉に住んでいる人の傾向、東京、長野、大阪、福岡に住んでいる人の傾向が瞬時に分かってしまいます。

Suicaの情報は、ビックデータの中では初歩的な位置づけです。そのうち、街中にある防犯カメラの映像から、様々なデータが抽出できるようになり、様々な分析ができるようになるでしょう。つまり、これまで人間が行ってきた「マーケティング」が、かなりの部分、不要になるのです。

人の心に訴えるキャッチコピーも、テクノロジーがつくれるようになるでしょう。既に、インターネットマーケティングでは、Aというコピーと、Bというコピーのどちらが反応がいいかをテストする手法があります。テクノロジーが進化すれば、それこそ膨大な言葉の中から、この商品を買いそうな人が好むキャッチコピーを統計的に導き出すことも可能になりそうです。

「考えることは人間にしかできない」と言われた時がありました。しかし、今やそうともいえません。先日も機械(テクノロジー)とプロ棋士が将棋で勝負して、機械が勝ってしまうという"事件"がありました。

機械がどうやって「考えて」いるのかは知りません。すべての戦略パターンを飲みこんでいて、確率統計的に、その時々に一番勝てる可能性が高い一手を割り出しているのかもしれません。しかし、いずれにしても、人間よりも"いい案"を機械が出せるようになっていることは事実です。

労働者が機械とテクノロジーに負けずに生きていくために必要なものは何か? それは簡単に言うと、「機械、テクノロジーにできないことをする」ということに尽きます。

ですが、将棋で人間が負けてしまったように、どんな課題でも、やがては機械とテクノロジーの方が速く、安く、優れた答えを出すようになるでしょう。人間ができることは、ごく限られた仕事になっていくのです。

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木暮太一の「経済の仕組み」

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10万部超のベストセラー『今まで一番やさしい経済の教科書』などのビジネス書で知られる著者が、なんとなく分かったつもりになっていた「経済の仕組み」を懇切丁寧に解説します。ビジネスパーソンの基礎力を高めたいなら必読です。

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